日立、神経発達症ADHDのASD併発を早期診断 服薬の効果をAIで検証

2019年2月13日 08:48

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神経発達症の早期診断プロセス(写真:日立製作所の発表資料より)

神経発達症の早期診断プロセス(写真:日立製作所の発表資料より)[写真拡大]

 日立製作所、自治医科大学、国際医療福祉大学、中央大学は8日、神経発達症である注意欠如・多動症(ADHD)患者が、自閉スペクトラム症(ASD)を併発しているかどうかの早期診断を支援するための基礎技術を開発したと発表した。

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 人とのコミュニケーションが上手くできない。嗜好が偏る。これらは、自閉スペクトラム症(ASD :Autism Spectrum Disorder)の症状といわれる。ASDは、子供の育て方が原因ではなく、感情や認知といった脳の異常とも考えられている。

 他方、ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、注意や行動を制御する脳の働きに関係している。1900年代にその概念が提唱され、小児期発症の慢性的な疾患という現在の概念に至たる。

 ADHDやASDは、長期間続くと不登校やひきこもりのほか、うつ病などに繋がる。ところが、ADHDやASDの特徴を持つ患者の併発有無を見極めるには、数カ月にわたる経過観察が必要であり、患者や家族にとってその負担は計り知れない。経過観測には、服薬後の特定の場所の脳活動信号を計測。治療経験のある医師のみが治療・療育方針を決められる世界だ。

 今回の発表は、服薬後の脳反応を計測して、人工知能(AI)の先端技術である機械学習で診断結果を学習。脳の意関連領域と運動関連領域の活動量を用いることがASD併発の有無を見分けるために最適であると導き出した。

 本成果は、2月8日発刊のFrontier in Human Neuroscienceに掲載している。

●自動解析アルゴリズムの開発

 脳の注意関連領域の脳活動信号が大きく、かつ、運動関連領域の脳活動信号が大きければ、ASDの併発の確率は低いようだ。

 他方、脳の注意関連領域の脳活動信号が小さく、かつ、運動関連領域の脳活動信号が小さければ、ASDの併発の確率は高い。

 数カ月後の診断結果の検証では、82%予測正確度を持つという。

 経験豊富な専門家のみがなしえた診断予測を参考にできることは、神経発達症患者への適切な治療を早期に提供できることに加えて、若手の医師の育成にもつながる。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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