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製薬会社の接待多いほど薬物中毒の死者数が増える 米国での研究

2019年1月29日 16:50

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記事提供元:スラド

あるAnonymous Coward曰く、 アメリカでは鎮痛剤として使われるオピオイド(ヘロインなどアヘン類縁の化合物)の濫用が社会問題となっており、「オピオイド危機」や「オピオイド・エピデミック(疫病)」(政府の啓発サイトWikipedia)と呼ばれている。アメリカ国内におけるオピオイド過剰摂取の死者数は1999年から2017年までの19年間でほぼ40万人である。被害は現在でも拡大中で2017年の1年間だけでも4万7600人が死んでおり、これは薬物過剰摂取の死者数全体の67.8%にあたる(数字はMD Magazine)。

 米国医師会雑誌のオープンアクセス版で1月18日に発表された論文「オピオイドを製造する製薬業界のマーケティングとオピオイド関連オーバードースによる死亡との関連性」によると、全米2,208の郡で67,507人の医師に投じられたマーケティング費約3970万ドル(44億円)を調べた結果、オピオイドを販売する製薬会社からの接待とオピオイド過剰摂取による死者数は密接にリンクしており、接待で使われる金額よりも回数の方が強い関連性を示すことも明らかとなった。

 ニューヨーク・タイムズの記事で、論文の著者は「オピオイド危機はとても複雑な問題であり、この論文が対象としているものはその中のほんの一部に過ぎないということは分かっています。しかし処方薬のオピオイドが死因となるケースは過剰摂取による死亡数全体の3分の1(訳注:論文要旨では40%)に上り、(違法流通している)ヘロインやフェンタニル系の常習者となった人たちが人生で最初にオピオイドと接する機会となるのもほとんどが処方薬です。オピオイドが必要でなかったかもしれない人がマーケティングによって新たな薬害に晒されることを防ぐには、今、調べておくことが必要不可欠でしょう。」と述べている。一方で、米国家庭医学会(AAFP)の会長は、「著者たちも認識しているように、この問題には調査できていない変数がいくつもある(訳注:つまり疑似相関かもしれない)から、短絡的にマーケティングと死者数を結びつけることはできません。我々は患者と接する中で問題の深刻さを十分認識し、戦ってもいるが、同時に、適切にペインコントロール(疼痛管理)をできるように医師を守っていかなければなりません。」と医者を委縮させて鎮痛剤が必要な人に行き届かなくなる懸念を表明している。

 公共機関も手をこまねいてるわけではなく、昨年秋までに全米で28の州政府がオピオイドの製薬大手のパデュー・ファーマ社に対しオピオイド危機の責任を問う訴えを起こしている(27州コロラド州)ほか、ニューヨーク市などの都市も独自にパデュー・ファーマを訴えている。マサチューセッツ州はパデュー・ファーマの元役員ジュディ・ルウェント(現在は英国の大手製薬会社グラクソ・スミスクラインの社外取締役)個人をも訴えており(BBC)、オーナーである創業家も様々な州政府や自治体に訴えられている。そんな中、ニュージャージー州はオピオイド危機対策として「医師一人当たりの年間接待金額を1万ドル以下にする」という規制を昨年から打ち出しているのだが、論文の著者は「接待の金額は接待した回数に比べればあまり重要ではないように思います」とコメントしている。

 州政府や自治体がこれだけの動きを見せる一方で、肝心の連邦政府や連邦議会だが、簡単に言うと汚職疑惑があってよく分からない状態になっている(新潮社Foresightに寄稿されたボストン在住日本人医師のレポート)。トランプ大統領は候補者時代にオピオイド危機への対処を公約として掲げており、就任後には実際に非常事態宣言を出したほか、オピオイド依存症を克服するためのビデオ投稿サイトまで作っている。ところが、トランプ大統領の最初期からの共和党内支持者であるマリノ下院議員を、オピオイド危機対策プロジェクトの最高責任者(ドラッグ・ツァーリ)に指名したところ、マリノ下院議員には製薬会社から大量の資金が渡っていると明らかになって指名を辞退された。マリノ議員は確かにこの問題の専門家だったが、オバマ政権下でマリノ議員が通したオピオイド対策法案は規制を強化するどころか、逆に麻薬取締局(DEA)の捜査員が違法流通させた販売員に手が出せなくなって野放しになってしまった(ワシントンポストの記事)。ちなみに、マリノ下院議員は昨年11月の中間選挙で勝って4選を果たしたが、議会が始まってたった2週間後に「民間企業に移る」と辞意表明をして今週既に辞職している。

 また、論文と同時に寄稿された現状の解説記事によると、ニュージャージー州で2015年第1四半期にヘロイン使用容疑の逮捕者のうち、ヘロインだけ陽性だった割合は98%でフェンタニル系は2%しか検出されなかったが、2018年第2四半期ではヘロインが52%、フェンタニル系が46%、それ以外が2%となっており、アンダーグラウンドな世界も含めてオピオイドの栄枯盛衰が今現在も進行している。著名人だと、2009年に死んだマイケルジャクソンは裁判でデメロール(ペチジン)への依存があったとされているが、少なくとも直接の死因は睡眠薬の可能性が高いのに対し、2016年に死んだプリンスと2017年に死んだトム・ペティはいずれも処方されたフェンタニル系の過剰摂取が死因である。

 不謹慎な話だが、「プレゼントは総額より回数」は何がしかの格言になりそうな含蓄があると思う。シミュレーションゲームで友好度や忠誠度を上げたい場合も、行動力を消費して最低額を投入し続けるのが効果的だしね。

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※この記事はスラドから提供を受けて配信しています。

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