東芝、「亜酸化銅太陽電池」の透明化に成功 低コストのタンデム型太陽電池へ

2019年1月21日 17:21

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開発された透明亜酸化銅太陽電池:25mm角セル(東芝発表資料より)

開発された透明亜酸化銅太陽電池:25mm角セル(東芝発表資料より)[写真拡大]

 東芝は21日、これまでのシリコン太陽電池と重ね合わせてセルを配置し、発電効率を上げるタンデム型太陽電池に使える、透明亜酸化銅太陽電池を開発したことを発表した。亜酸化銅太陽電池で透明化に成功したのは、世界初という。

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 今回開発した透明亜酸化銅太陽電池は、短波長光を吸収して発電し、長波長光を約80%透過する。透過した長波長光は、これまで広く使われている結晶シリコン太陽電池で発電に使える波長域と一致する。そこで、トップセルに透明亜酸化銅太陽電池を、ボトムセルに結晶シリコン太陽電池を配したタンデム型太陽電池を構成すると、発電効率の大幅な向上が期待できる。一般の結晶シリコン太陽電池と組み合わせて作ったタンデム型太陽電池の試作セルでは、ボトムセルのシリコン太陽電池は、単体での使用時の8割の出力で発電できることを確認したという。

 再生可能エネルギーの普及に向けて、高効率発電が期待できるタンデム型太陽電池の開発が各所で進められ、これまで、ガリウムヒ素半導体などを用いた太陽電池が製品化されてはいる。タンデム型太陽電池では、発電効率30%台と、一般的な結晶シリコン太陽電池の1.5倍から2倍の高効率発電ができるものの、製造コストが結晶シリコン太陽電池の数百~数千倍と、非常に高価なことが、普及を阻害していた。

 今回のトップセル用透明亜酸化銅太陽電池は、安価な材料で構成されているため、タンデム型太陽電池の大幅なコストダウンが期待できる。亜酸化銅太陽電池の製造では、亜酸化銅の層を成膜する時に、酸化銅や銅といった酸化状態の異なる銅酸化物が混入して透明化を阻害していた。東芝では、成膜時の酸素濃度を精密制御するプロセスを開発して、安価な銅を用いながら透明セル化することに成功。3年後の低コストタンデム型太陽電池の実用化をめざして、開発を進めるという。

 開発技術の詳細は、23日発行予定の東芝レビュー1月号に掲載される。

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