朝日新聞の販売店は新聞を配達するばかりではない

2018年12月31日 08:44

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 2006年6月に夢の街創造委員会がジャスダック市場に上場してきた際は正直、「こんなビジネスが伸長するはずがない」と思った。が、いま先見の明のない我が身を叱っている。主軸業務は「出前館」なる出前のポータルサイトの運営。「出前」を欲する人と「出前」をしたい飲食店を結ぶサイトである。18年11月末時点で加盟飲食店数は1万7834。アクティブ(年に1回以上サイトを利用し出前をとる)会員数は全国に274万人。拡大の一つの転機となったのは16年12月の、朝日新聞社との提携(朝日新聞が、現在5%強株式を保有する大株主の1社)と捉えることができる。

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 売上を伸ばす為に、出前はしたい。だが配達員(ひとで)がない。そんな飲食店も少なくない。そうした飲食店にとり神の手!?となったのが、「販売店の事情に応じ、出前を代行する」という内容の朝日新聞との提携だった。

 販売店は新聞配達でエリアの土地勘に通じている。朝夕の本業以外の時間帯はエリア内の出前を欲する人に、出前をしたい会員飲食店に代わって配達する。出前館に「出前」のオファが届くと、配達員がいない飲食店に伝わる。と同時にエリア内で登録している朝日新聞の販売店に情報が伝わり、飲食店は指定の時間に備え料理を用意し販売店員(はいたつにん)を待つという枠組みだ。

 全国に配達代行(シェアリングデリバリーサービス:シェアデリ)を手掛ける販売店は現時点で78に及んでいる。ちなみに宅配寿司の小僧寿しも、シェアデリ仲間。夢の街創造委員会では今8月期中にシェアデリ拠点を150カ所、3年以内に530カ所を新設する目標を掲げている。朝日新聞の販売拠点は全国に2500余。販売拠点のシェアデリ化の進行が「目標」達成に大きな要因(カギ)とされている。

 夢の街創造委員会のビジネス施策も評価に値するが、実は朝日新聞の「商売上手」には唸らされることが多い。例えば、学情という就職情報を専業とする上場会社がある。主軸は合同企業説明会「就職博」だが、「新卒採用サイト」「中途採用サイト」も展開している。新卒採用サイトの名称は「朝日学情ナビ」。同社の管理部IR担当者から「13年1月に朝日新聞・朝日学生新聞の両社と資本業務提携し、朝日ブランドの新卒求人サイトを立ち上げた。売り手市場のいま朝日ブランドの効果は着実に現れている」と聞いた。

 私は「朝日新聞嫌い」の物書き屋。「カチン」とする記事にしばしば出会う。が、その商売上手ぶりには舌を巻かざるをえない。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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