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PayPayは100億円もの費用をかけて、キャッシュレス決済の覇権を握ったのか? (上)
PayPay(ペイペイ)が12月4日から始めた「100億円あげちゃうキャンペーン」は、僅か10日間で「アッという間に」終了した。19年3月末まで最大118日間の期間を設定していたが、13日には予定していた100億円が底をつき、この10日間で190万人の利用者を獲得したという。単純に1人当たりの獲得コストを計算すると、5千263円ということになる。随分高額な販促費という気もするが、大きな話題を集めたが故に、一気に知名度を上げたことは間違いない。
しかし、高まった知名度は必ずしも好意的なものだけではない。そう感じるには、それなりの理由が複数上げられるからだ。
一つ目は、4日の開始早々からシステム障害により、決済停止や決済の遅延が再三発生したことだ。還元金額の刺激が強すぎたのに対して、必要な検討や準備が不足していたと指摘する声が上がるのは止むを得むまい。大手の家電量販店では、買い物客が殺到する現象を引き起こしたとの報道もされている。
二つ目は、ペイペイを利用していないのに、利用したとしてクレジットカードの請求が届く事例が、現時点で数十件確認されていることだ。クレジットカード情報がどんな形で漏洩したのかは、明確ではないが、今後精査されることになるだろう。
アプリの利用登録に際して、クレジットカードの番号やセキュリティコードの入力は欠かせない。入力内容が相違していた場合のリトライ許容回数が緩く設定されていたために、不心得者に付け入るスキを与えたようだ。キャッシュカードなどでは、3回程度暗証番号をミスすると使えなくなるのは常識だ。新規登録件数を伸ばしたい思惑が先行するあまり、入力ミスに対するチェックが有効に機能しない状態だった。ミス入力を何度か繰り返してもロックが掛からない「甘い」状態だったというから、不心得者には天国のようなものだ。
当然このケースにはレベルを上げたセキュリティ対策が施されている。問題なのは、被害の規模が把握し切れていないことだ。被害者からの申告がなければ実態は掴めないが、キャッシュレス決済に関心がなければ、異常に気付く時期も遅れるだろう。全体像を把握する時期の見通しはつかない。
三つ目は、「あまりにあっけない幕切れ」だ。もちろん、予算がなくなった時点で終了することは告知されていたから、118日の期間を見込んでいても10日で終了したことに問題はない。が、「随分甘い見通しをするものだ」と世間の評価を受けることは痛い。還元金額が高額だったので、一気に予想を超える大きなうねりを呼んだということになるが、楽しみにしていて間に合わなかった人は相当な数に上る。期待外れの失望感をどんな形で表現するかは個人差があり一概には言えないものの、やや冷めた目で見られることは避けられないのではないだろうか?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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