資生堂、ブランド強化とデジタル化加速によりグローバルビューティカンパニーへ

2018年12月3日 10:49

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 資生堂は11月28日、著しく伸長する中国市場での持続的な成長をより確実にするため、中国地域本社体制を強化すると発表した。

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 中国人コンシューマーへのブランド発信力と市場における実行力の強化のため、中国地域における「プレステージ」の統括機能と「パーソナルケア」、「コスメティクス」などのブランド育成をリードする最高マーケティング責任者を設置し、合わせて地域本社社長がEコマースプラットフォーム企業との戦略的提携を推進する。

 資生堂は、1872年福原有信が東京銀座に日本初の洋風調剤薬局として「資生堂薬局」を創業したのが始まりである。

 化粧品事業への進出は、現在まで100年以上にわたって世界で愛用され続けている高級化粧水「オイデルミン」を1897年に発売した時に始まり、1916年から1926年にかけて、本格的香水「花椿」、「七色粉白粉」、「資生堂コールドクリーム」を相次いで発売、資生堂連鎖店(チェインストア)制度を発足して薬局から化粧品事業への転換を果たした。

 売上構成比は、中国14.3%、アジア太平洋5.4%、米州14.0%、欧州12.8%と世界120の国と地域へ展開、グループ会社85社を擁し、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティカンパニー」の実現に挑む資生堂の動きを見ていこう。

■今期第3四半期(2018年1~9月)実績と通期(2018年12月期)見通し

 今期実績は、売上高8,058億円(対前年比10%増)、営業利益は1,014億円(同44%増)でいずれも過去最高を更新した。

 収益好調の要因としては、高級化粧品「プレステージ」がグローバルで大きくけん引し、中国向け販売が大きく伸長したことによるものである。好調な実績を受けて、今期の通期見通しは売上高が当初見通しよりも570億円上方修正の1兆900億円(同9%増)、営業利益は200億円上方修正の1,100億円(同37%増)を見込んでいる。

■中期計画(2018年12月期~2020年12月期)による推進戦略

 2020年の営業利益1,200億円~1,300億円(2017年比49%~62%増)を目標に、世界で勝てる日本発のグローバルビューティカンパニーを目指して下記の戦略を推進する。

 1.ブランド事業のさらなる「選択と集中」

 ・カウンセリング主体の高級化粧品「プレステージ」の成長加速: スキンケアに加えてメーキャップ、フレグランスの強化による商品陣充実、取扱店拡大と既存店の刷新、中国旅行者と越境販売の取り込みによる中国市場拡大。

 ・ドラッグストア、量販店向け「パーソナルケア」と幅広いチャネル向け「コスメティクス」の強化: 付加価値の高い商品開発、マーケティング投資でアジア市場拡大。

 2.デジタライゼーションの加速

 ・電子商取引(EC)事業の売上構成比(2017年8%→2020年15%)へ拡大: ネットで個別ニーズに合わせたマーケティングを強化、ラグジュアリーブランドVIOLET GREY社へ出資し北米でEC販売を加速、2020年中国市場のEC売上構成比40%へ。

 ・グローバルオペレーションの基盤強化: ITプラットフォームの統合、データの一元管理を含めビジネスプロセスの標準化。

 3.イノベーションによる新価値創造

 ・研究開発の強化と新事業開発: グローバルイノベーションセンターを12月から稼働、セカンドスキン開発に向けて最先端技術と人材の獲得、高機能美容食品、毛髪再生、バーチャルメイクなど新領域開発。

 化粧品メーカーとして日本、アジア第一の規模となり、グローバルビューティカンパニーを目指す資生堂の躍進から目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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