鳥貴族、今期は新規出店ペースを落とし既存店の品質改善・向上へ

2018年9月21日 16:56

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 低価格の焼き鳥店を展開する鳥貴族【3193】は21日、前期7月末の決算説明会での資料を開示した。前期までは中期経営計画「うぬぼれチャレンジ1,000」をもとに積極的な出店を行ってきたが、客数の低下に伴い既存店の売上高、利益ともに減少するという結果になった。また、ブランディング戦略に関しても自社の店舗が認知されていない層が多くいるとのことが分かった。この結果を踏まえて、今期は新規出店のペースを落とし、既存店の品質改善と向上に注力することとなった。

 鳥貴族の前期(2018年7月期)業績は、売上高が前期比15.8%増の339億7800万円、経常利益が同13.1%増の16億1300万円と増収・増益だったが、不採算店舗の整理にて損失が発生し、純利益は同31.6%減の6億6200万円と減益となっていた。一方で、前期当初に発表されていた予想に対しては売上高・経常利益ともに到達することができず、また利益率に関しても前々期営業利益率6.4%に対して前期は5.0%となった。

 この原因として、昨年10月の値上げの影響と出店攻勢による自社他社との競合が激化したことを挙げている。客単価が落ちていないにもかかわらず、客数と売上高が落ちている点からしてもその原因に当てはまりそうだ。価格に敏感なファミリー層や40代以上の顧客が離れる傾向にあったことも同じことが言える。

 また鳥貴族はブランド確立を目的として、積極的な店舗展開で認知度を上げる戦略をとっていた。しかし、20~30代男女を対象に同社が行ったアンケート調査の結果では、鳥貴族の未利用者が32%、鳥貴族を知らないという人が23%存在することが判明した。

 そこから、今期の基本方針として新規出店の一時停止と既存店の回復に力を入れることとなった。既存店の労働環境整備と人材の育成を行うことで既存店全体の品質向上を目指しながら潜在顧客の掘り起こしを図りたいとの狙いだ。

 鳥貴族は多くの飲食チェーンが採用する「セントラルキッチン」を採用せず、店舗ごとに仕込みを行うことで「手作りの味」を差別化として展開していた。しかしそのような店舗運営には人材育成が大きなカギとなるため、今回の既存店注力という選択は、鳥貴族のブランド力向上への布石になるとみられる。(記事:福井廉太・記事一覧を見る

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