超小型衛星を利用した宇宙エレベーター実験に取り組む静岡大学

2018年8月28日 16:57

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 9月11日に種子島宇宙センターから打ち上げられる予定の「こうのとり」7号機に、3つの超小型衛星が搭載される。そのうちの1つ、「てんりゅう」の愛称で呼ばれるSTARS-MEは宇宙エレベーター実現のための宇宙実験を実施する超小型衛星だ。このSTARS-MEの開発に着手したのが、静岡大学工学部である。

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 能見公博教授らが中心となって活動するSTARS(Space Tethered Autonomous Robotic Satellite)プロジェクトは、衛星開発のプロジェクトだ。STARS-MEは、2016年12月19日に放たれた「はごろも」の愛称で呼ばれるSTARS-Cの後継機である。2機とも、宇宙エレベーターの実験を実施する超小型衛星として開発された。

 STARSの一連の宇宙エレベーター実験では、約10メートルのテザー(紐)と3×3×6センチメートルの大きさの昇降機が使用される。テザーでつながれた10×10×10センチメートルの2機のCubeSatが分離し、テザー上を昇降機が移動する実験を行うという。

 テザーに取りつけられた昇降機を移動させるために、テザーの伸展技術が宇宙エレベーター実現には欠かせない。STARSプロジェクトで実施された従来の衛星ではバネの力でテザーを伸展させたが、STARS-MEではモーターによりテザーを徐々に繰り出していくという。

 3月3日に大気圏に再突入しその役目を終えたSTARS-Cでは、テザー伸展コマンドの送受信を確認しテザーの伸展した可能性が高いものの、通信が不調で実際に伸ばせたかを証明する映像データは得られなかった。

 STARS-MEの愛称は6月に公募し、選考の結果「てんりゅう」に決まったことが7月10日に発表された。開発の中心メンバーである能見教授は、「愛称『てんりゅう』のとおり、クライマーが昇っていくよう、気を引き締めて運用していきたい」と語る。

 21日には星空の天体観測を目的としたSTARS-AOの愛称が「あおい」に決まったことが発表されたばかり。STARS-AOは2019年に打ち上げ予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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