コラム【新潮流2.0】:猛暑(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)

2018年8月15日 10:31

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記事提供元:フィスコ


*10:31JST コラム【新潮流2.0】:猛暑(マネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆)
◆今年の夏の記録的な猛暑は、「ダイポールモード現象」によるものだという。インド洋で起きる海水温の異変である。インド洋の海水温は通常、東が高く、西側のアフリカ沖が低いが、これが逆になると西部で上昇気流、東部で下降気流が発生する。その影響で今年は偏西風が例年になく大きく蛇行した。南側への蛇行は梅雨前線に影響して豪雨を、北側への蛇行はチベット高気圧の張り出しなどに関係して猛暑をもたらしたというわけだ。

◆原因がわかったところで、この暑さはどうにもならない。梅雨明け前、小売り各社は夏物の売れ行きが不振であったが記録的に早い梅雨明けと猛暑で一気に売り上げ回復か−というわけにはいかないようだ。こうも暑いとそもそも外出しようという気にならない。外にいたくないから屋上ビアガーデンだって閑古鳥だ。飲食、レジャー、ショッピングなどが控えられ街角景気も悪化している。

◆タクシーは繁盛する。普段なら歩く距離も、ついついタクシーに乗ってしまう。運転手さんに、「猛暑効果の恩恵はありますか?」と尋ねると、「まあ、おかげさまで」と相好を崩した。しかし、すぐに真顔に戻って「でもね、財布の中身が変わらないなら、猛暑で使っちゃったら、ほかで倹約するでしょう。夏にタクシーによく乗ったら、秋からは乗ってくれなくなるのでは?」 街角景気を代表するタクシードライバーは、流石、経済をよくご存じだ。猛暑効果は反動に注意である。

◆しかし、またその逆もある。夏に外出や支出を控えた分、涼しくなればひとびとは街に戻っておカネを使ってくれるに違いない。それに反動はタクシーの運転手さんが言う通り、「財布の中身が変わらない」のが前提だが、賃金はそろりと上がり始めた。6月の名目賃金は前年比3.6%上昇、21年ぶりの高い伸びだ。減り続けている消費にも早晩歯止めがかかるだろう。そのためには、まず猛暑が終わることが条件だ。暑さがやむ処暑まであと8日である。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆
(出所:8/13配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より抜粋)《HH》

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