漫画という皮を被った文学!アニメ「恋は雨上がりのように」を見終わり思うこと

2018年4月2日 06:37

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■忘れたものを思い出させてくれる「恋は雨上がりのように」

 2018年1月にスタートしたノイタミナ枠のアニメ「恋は雨上がりのように」。当初はポップな演出により、自分の父親と変わらない男性に恋心を抱く女子高生がとにかく可愛く見える内容だった。しかし、最終回まですべて見終わると、文学の世界を見事に漫画として描き切った作品という印象が残った。

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■女子高生と中年店長の恋を描く「恋は雨上がりのように」

 陸上部のエースだった橘あきらは、足のケガのためリタイアを余儀なくされた。何もやることが無くなったあきらはただ無為に毎日を過ごしていたが、ファミレス「ガーデン」で近藤正己に出会う。彼はあきらにサービスを贈るだけでなく、何気ないアドバイスを贈る。たった一言のアドバイスだったが、それがあきらの恋心に火を付けた。

 近藤のことが気になったあきらは、すぐにガーデンでバイトをはじめることにする。すぐにでも近藤に思いを伝えたいあきらだったが、実は恋愛初心者で感情表現も苦手。その上にクールな見た目が災いして、他の人からも怖がられることが多い。それでも近藤に対してアタックを試みるも、自分に自信を持てない近藤は卑下されているように勘違いをしてしまい、彼女の感情をとらえきれずにいた。

 それでもあきらは果敢かつ大胆にアタックを続け、ついに近藤に「友達として」と言わせるまでの仲に発展する。文学を愛する近藤と一緒に古本屋に出掛けるまで打ち解け合うも、あきらの幼馴染である喜屋武はるかからは理解を得られない。さらに、彼女はケガがほぼ完治したあきらに帰ってきてほしいと願うも、あきら自身はそのケガのコンプレックスから抜け出せずにいた。

■あきらの純真さに近藤の心にも変化が……

 あきらの真っ直ぐな気持ちに触れることで、近藤自身の心理にも変化が生まれていた。文学者として何も大成できず、ずるずると店長しかできない自分に価値を見いだせずにいた近藤。だが、あきらから必要とされることで次の日に希望を持てるようになり、再び文学にも向き合うだけのメンタルに持ち直していた。

 自分の変化を自覚し始めた近藤は、自分の中で煮え切らないものを抱えているあきらがいることに気付く。そこで、近藤は自身がまた小説に向き合うことを約束したと話した上で「橘さんにも忘れている約束があるんじゃない」と背中を押す。これにより、あきらはまた陸上部への復帰を考え、2人の恋は実りはしなかったが夢を追いかけるための力を取り戻した。

 ラブラブカップルは描かず、互いに足りないものを補い合ったところで本作品はラストを迎えた。アニメでは近藤があきらを外で呼び止めた際、振り返った彼女が全速力で走って抱き合うというシーンもあった。このシーンは想像世界なのだが、それだけ2人の距離が縮まった上に信頼関係を築いたことを印象付けるものだった。

 ラストシーンは、まるで去年のアカデミー賞に輝いた「ラ・ラ・ランド」を彷彿とさせるものがあった。アニメながら見ごたえのある内容であり、ぜひ鑑賞いただきたい作品だ。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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