ペロブスカイト太陽電池の長寿命化に成功、東大工学部の研究

2018年3月22日 08:10

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 ペロブスカイト太陽電池。次世代の太陽電池として期待される構造体である(ペロブスカイトは結晶構造の名でありマテリアルの名ではない)。変換効率の高さは既に多くの研究開発により確立されているのだが、水や酸素への暴露に弱く寿命が短いという問題があった。そこで、それを克服することを試みたのが今回の研究である。

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 発表者としては、東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻の松尾豊特任教授、田日特任助教、丸山茂夫教授(産業技術総合研究所クロスアポイントメントフェロー エネルギーナノ工学研究ラボ長)が名を連ねている。

 ペロブスカイト太陽電池は有機太陽電池の持つ「塗布プロセスが容易である」という性質と、効率が高いという無機太陽電池の特徴を兼ね備えている。そして次なる問題は寿命だというわけであるが、そのために優れた特性を持つ新物質が、日本のベンチャー企業の手によって開発されていた。

 「リチウムイオン内包フラーレン」と呼ばれるものを有機半導体に混ぜると、耐久性が10倍も向上するのである。具体的には、1,000時間相当の疑似太陽照射下において、効率の低下を10%以内に収めることができるという。

 リチウムイオン内包フラーレンとは何かということであるが、60個の炭素原子のサッカーボール状の三次元的空間構造の中に、中性のリチウムが含まれている「リチウム内包フラーレン」が、電子を受け取った場合に生成されるものである。原子60個の炭素が殻のようになっており、特異的な光吸収性を持っているという。

 なお、研究の詳細は、Angewandte Chemie International Editionに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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