【大前研一「企業の稼ぐ力を高める論点」】求められているのは働き方改革ではなく「休み方改革」だ

2017年11月28日 21:25

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記事提供元:biblion

 【連載最終回】今、日本企業の「稼ぐ力」が大幅に低下しています。長時間労働の常態化により生産性が低く、独自の施策によって効率化を進めることが重要課題となっています。経営トップは常にアンテナを高くして、自社や業界がどれだけの危機にさらされているのかを正確に知覚し、正しい経営判断につなげていく必要があります。本連載では、企業の「稼ぐ力」を高めるための8つのヒントをお伝えします。

【大前研一「企業の稼ぐ力を高める論点」】求められているのは働き方改革ではなく「休み方改革」だ

 本連載は、書籍『大前研一ビジネスジャーナル No.14(企業の「稼ぐ力」をいかに高めるか~生産性を高める8の論点/変化する消費行動を追え~)』(2017年9月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。最終回となる今回の記事では、企業の稼ぐ力を高める8の論点から『論点7.従業員の子育て支援にどう対応するべきか?』『論点8.働き方改革ではなく休み方を改革すべきではないか?』をご紹介します。
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従業員の子育て支援にどう対応するべきか?

そもそも「育休」という概念自体が間違い

 育休の問題ですが、これは在宅勤務ができるようにしたら終わりです(図-27)。

 インターネットとスマホ革命によって、今や大半のホワイトカラーは場所を選ばずに仕事ができるようになっています。
 したがって、企業は育休を増やすよりも家で子育てをしながら働ける制度とシステムを整備すべきで、これが実現すればこの問題は解決です。

 今は米国などの電話会社はみな在宅勤務で、自宅にいてコンピュータをオンにしていると勤務中だと認識されるようなシステムになっています。
 赤ちゃんの世話をしているときはそれをオフにして、オンにしたときは仕事をちゃんとやれるようにするという在宅勤務ができるようなシステムを整えれば、育休を巡る様々な問題はなくなります。
 在宅勤務を選ぶかどうかはもちろん本人の問題です。在宅勤務が嫌なら育休を取ればよいですし、育休を取ってから在宅勤務をするという選択肢もあるでしょう。
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「大前研一ビジネスジャーナル」シリーズでは、大前研一が主宰する企業経営層のみを対象とした経営勉強会「向研会」の講義内容を読みやすい書籍版として再編集しお届けしています。
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働き方改革ではなく休み方を改革すべきではないか?

国民が自由に長期休暇を楽しめる施策をすべし

 最後に「働き方改革ではなく休み方を改革すべきではないか?」という提案をしましょう。
 日本の有給休暇消化率は世界最低レベルです(図-28中)。ブラジル、フランス、スペイン、オーストリア、香港は100%です。
 有給休暇とは普通は自分の都合で好きな時に取るものですが、それが半分程度しか取れていないというのが日本の悲劇です。
 好きな時に休める国民が半分程度しかいないというのに、政府は国民の祝日を増やしてきています。平成に入ってからだけでも、平成8年に海の日(7月20日:後に7月第3月曜日に改正)、平成28年に山の日(8月11日)と2日増え、合計で年間16日という祝日数は、実はG8で最多です。
 2003年にハッピーマンデー制度が施行されてからは土日と合わせた3連休も増えていますし、ゴールデンウィーク中の5月4日や敬老の日と秋分の日の間に設けられた「国民の休日」など、次から次へと休みをまとめて固めていく大型連休化の施策を打ち出しています。
 政治家のサービス合戦でしょうが、これでは駄目です。国が祝日や連休を増やして国民を強制的に休ませようとすること自体が間違いで、国民それぞれが自分の好きな時に休みが取れるような施策を考えるのが政治の仕事です。

 国民みなが同じ時に同じように休みを取るから交通渋滞が起こり、家族サービスで出かけてもどこも混雑していて、おまけにどんなサービスも高額で、くたびれ果てて帰ってくることになるのです。これを分散させる必要があります。
 大型連休化を進めても国内宿泊観光旅行の回数は1人平均2回にも満たず、3泊もしていないのです(図-28左)。自分の好きな時に1~2週間の休みを取れるような工夫をしなければなりません。
 (4573)

 また、そのようにして休みを分散化しなければ日本のツーリズム産業は成長しません。
 ドイツではスキーバケーションは学校ごとに週が違います。ある週にはこの学校が、別の週にはこの学校が、という具合に休校になり、親も子どもに合わせて休みを取って1週間家族でスキー場に行くのです。こういうことを子どもの頃からやっているからドイツのスキーはレベルが高いのです。

 日本は冬休みが同じ時期に集中しているのでスキー場がガチャガチャに混んでしまいますし、それ以外の時はガラ空きなのでホテルもペンションも経営が立ち行かなくなるのです。

企業はどうすればよいか?

 ここまで「企業の『稼ぐ力』を高めるための8つの論点」を考えてきましたが、最終的には企業はどうすればよいのでしょうか(図-29)。
 (4574)

 まずは、デジタル・ディスラプションやグローバル化の罠に引っ掛からないように常にアンテナを高くしておく必要があります。
 「稼ぐ力」を高めるには、かなり地味な仕事ですが間接業務の仕分けをして、要らないものは削る一方で、外部に出せるものは出して、本当にコアの仕事を社内でやるようにします。
 クリエイティブな仕事ができる、会社の将来にとって非常に重要な仕事ができる人間を中核として社内に抱え込むようにして、あるいは社外のそういう人材にアウトソーシングしていくということをやらなければなりません。

 とにかくアンテナ高く、前出の企業やサービスの実例なども参考に、もしかしたら自社を丸ごと一からつくり直すぐらいの気持ちでやっていただきたいと思います。(本連載は今回で終了となります。)「大前研一ビジネスジャーナル」シリーズでは、大前研一が...
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