小惑星探査機「はやぶさ」の電力制御技術、鉄道のダイヤ回復に応用される

2017年9月16日 11:38

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研究に用いられている試験車両。(画像:JAXA発表資料より)

研究に用いられている試験車両。(画像:JAXA発表資料より)[写真拡大]

 2003年から2010年にかけて運用された小惑星探査機「はやぶさ」の遺産というべき技術の一つである「電力デマンド制御」を、東急電鉄で列車遅延回復のために応用する研究が進められている。

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 研究に携わっているのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)、そして東急テクノシステムによる共同研究グループである。2015年11月から、「列車運行電力デマンド制御手法」と名付けた技術を実地に応用するための研究を進めてきた。現在、実際の列車走行試験を行う段階まで来ているという。

 地球と小惑星イトカワとを60億キロメートルはるばると往還し、そのサンプルを持ち帰るという、はやぶさが行った前代未聞のミッションは、困難を極めるものであった。投入された技術もまた多種に渡った。その中の一つが、補給の困難な宇宙空間において、電力をいかに効率的に用いるかという技術、電力デマンド制御であったというわけである。

 現在開発されている「列車運行電力デマンド制御手法」においては、列車が遅延した場合、列車ごとに優先度が設定され、電力デマンドが独立かつ並列的に分け合われる。そして、最も遅延の大きい列車から優先的に、ダイヤを回復していく。

 自律分散方式という制御方式が用いられており、時間帯に応じて、列車本数の増減があっても、相互乗り入れ列車が混在していても、同じ手法を適用することができる。また、双方向通信を必要としないので、導入にあたって設備投資や通信コストは少なくて済む。

 制御は高速で行うことができ、利便性を落とさず、かつ制約を管理する、その両立を可能とする。

 今年5月に行われた列車走行試験では、電力制御の運用が可能であることが確認され、今後、さらなる実験によって、遅延回復制御が可能であることを実証していく予定であるという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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