小笠原諸島・父島に飛行場建設?実現にはなお課題多し

2017年7月29日 16:10

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小笠原・父島、現状本土との唯一の交通路である二見港。

小笠原・父島、現状本土との唯一の交通路である二見港。[写真拡大]

 東京都と小笠原村は27日、小笠原諸島と本土を結ぶ航空路の開設について検討する協議会を、7年ぶりに開いた。3つある案のうち、父島・洲崎地区に飛行場を新設するプランが検討の軸となると都は説明しているが、その案も実現に向けては課題が山積している。

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 小笠原村は東京都に属する。30あまりの島々からなるが、一般の住民が居住しているのは父島と母島の2島のみ。総人口は約3,000人。

 小笠原諸島は本州から約1,000キロ離れているが、民間空港はない。一般に利用できる唯一の交通手段は定期船「おがさわら丸」であるが、片道丸24時間ほどかかり、そして1隻だけで往復運航をしているので、便数にもかなり制約がある。

 空港を作る計画は、古くは小笠原諸島が日本に返還された翌年にあたる1969年から、幾度も浮上しては消えている。その最大のネックは、「飛行場を作れるような場所がほぼ存在しない」ということである。

 1969年にあった計画というのは、父島の北の兄島に飛行場を作る、というものであった。しかしこれは着工前に断念されている。1998年には、父島の時雨山が候補地として調査されたが、その計画も中止となった。

 空路が無理なら、ということで、その名も「テクノスーパーライナー」という超高速船で島と本土を結ぶという計画などもあったのだが、これも種々の事情があって頓挫に終わっている。

 さて、現在残されている案は3つある。1つは、民間人の上陸は許可されていないが行政区分上は小笠原村に属している硫黄島の自衛隊基地を中継地とし、本土と父島を空路で結ぶというもの。2つ目は、水陸両用飛行艇で父島と本土を直接結ぶというもの。

 だが27日の会合では、これら2案には困難が多すぎる、との報告がなされた。すると残る最後の案は、父島に小型機用の飛行場を作る、というものである。

 前述のように、小型機用の飛行場であってもなお用地の確保が困難であるため、峠を崩し海を埋め立てと、かなりの大工事が必要になる。厄介なのは、小笠原の自然の価値との兼ね合いだ。何しろ、小笠原諸島は世界自然遺産に指定されている。

 しかし小笠原村の森下一男村長が会合で述べたように、小笠原にとって空港は「悲願」である。果たして今回の協議会はどのような結論へと至ることであろうか。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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