弘前大学、炎の位置を超音波で特定するシステムを開発

2017年6月1日 07:59

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 弘前大学の研究グループは、煙が充満し視界が制限される火災現場において利用可能な、炎の位置を超音波を用いて高精度に特定する手法を開発した。日経産業新聞が報じた。

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 超音波には、煙は通過するが、炎にぶつかると「ゆらぎ」を生じる性質がある。つまり、炎があるかどうか目視することができない対象に向けて超音波を発し、反響を分析すれば、超音波が炎のある場所を通ったかどうかをセンシングすることができ、それを利用した、炎の位置の特定が可能であるというわけだ。

 ちなみに、音響を利用した空間把握方法を反響定位、もしくはエコーロケーションという。コウモリ、イルカ・クジラなどはごく日常的にこれを利用して暮らしている。人間はよほどの訓練を積まないと難しいが、広義には、視覚障害者の人々が白杖を用いて行うコンクリートなどの音響による状況把握もエコーロケーションの一種であるとされている。

 この研究は、主には消防活動への応用を目指したものである。素早い消火や救助、そして消防士らの安全確保につながることが期待される。

 一般的な火災報知器は、火を感知する能力は持っているが、火の位置を特定することはできない。サーモグラフィーで温度の高い位置を探査する技術は既に存在するが、熱は伝播する性質を持つため、炎と、炎によって熱せられた高熱源体を識別することは困難である場合もある。

 発信する超音波は、1秒間に数十回。壁に跳ね返って戻ってくるそれの振幅を、受信機で捉える。複数の角度や方向を同時に定位する装置を作れば、「炎の上がっている角度と距離」をほんの数秒で割り出すことができるようになる、と研究グループは考えている。

 また、理論的には、このシステムをロボットに組み込み、火災現場に投入することも考えられる。研究グループは、関連企業と共同で、まず人やロボットが携行することのできる小型の装置を開発することを目指している。協力が得られれば、1~2年ほどで実用化が可能なのではないかという。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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