テレビ離れはアイデアの枯渇にはじまる、ドラマは本当につまらないのか

2017年4月27日 21:46

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ドラマでは企画力や脚本の力が大事であることを再確認したい。

ドラマでは企画力や脚本の力が大事であることを再確認したい。[写真拡大]

■フジテレビ『人は見た目が100パーセント』が酷評

 4月13日からはじまったフジテレビのドラマ『人は見た目が100パーセント』が酷評の嵐となっているようだ。女子力のない人が女子力を得ようとして奮闘する姿を桐谷美玲と水川あさみ、ブルゾンちえみの3人が演じているのが本筋のドラマ。内容だけ見れば現代でも受けそうだが、「キャスティングに無理がある」と言われている。

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■キャスティングありきの日本ドラマ

 フジテレビといえば、一時期はテレビ業界の王者であった。バラエティ番組だけでなくドラマにおいても『HERO』や『僕の生きる道』、『のだめカンタービレ』など記憶に残る作品があるだろう。しかし、近年のフジテレビは視聴率が10%に満たないものが多く、『人は見た目が100パーセント』も例にもれず1桁に低迷している。

 キャスティングだけを見ればそこまで悪くない。水川あさみは過去に『医龍』においてベテラン看護師を演じており、桐谷美玲も『荒川アンダーザブリッジ』において河川敷に住む少女役の経験がある。それぞれ濃いキャラクターを演じた経験はあるが、今回のドラマにはどう考えてもミスマッチである。

 『人は見た目が100パーセント』は、女子を忘れた女性が「女性」を取り戻すための過程がテーマとなっている。そのため、普段からファッション誌などに掲載される女性がこの手のドラマを演じても、やはりリアリティに欠ける。もし、この2人に女優としてのかなりの力量があれば問題なかったのだろう。だが、悲しくも視聴者に「女性」を失った女性というリアリティを与えることができなかったようである。

 そもそも、昔から日本のドラマはキャスティングありきのドラマ化が行われているといわれている。この真偽は定かではないが、コメンテーターのデーブ・スペクター氏もツイッターで「視聴者を無視する芸能プロダクション先行で不適切なキャスティング」というつぶやきを残している。

■キャスティングでなく企画力が光るドラマに脚光

 フジテレビのドラマ不調の反面、最近ヒット作を叩き出しているのがテレビ東京とTBSだろう。テレビ東京は『勇者ヨシヒコ』という、低予算をあえて利用したシュールな笑いを提供するドラマがヒット。さらには『バイプレーヤーズ』という日本を代表する脇役にスポットを当てたドラマもヒットとなった。

 また、昨今のTBSは漫画原作をうまくドラマに仕上げることに成功している。2016年の『逃げるは恥だが役に立つ』は大きな反響を呼び、「恋ダンス」は2017年でもまだ聞く言葉となった。また、現在放送中の『あなたのことはそれほど』や『リバース』も、原作の見どころを演出や脚本によってうまく映像化している。

 この2つのテレビ局は、原作に頼ることなく「企画力」が徹底していることに尽きる。テレビ東京は独自のアイデアをうまくドラマにしており、TBSでは演出や脚本において無理のない設定をきちんと表現している。特に、『あなたのことはそれほど』は現代女性を巧みに表現しており、それを映し出す点においては『人は見た目が100パーセント』と大きな差が出している。

 テレビ局のドラマを比較するだけでも、局自体が持つ「企画力」や「演出」面において差が出ているのがわかる。このように考えると、原作よりも大事なのは各テレビ局の企画力だと思わさせられる。企画力というアイデアがないと、どのようなおもしろい原作も「駄作」と評価されてしまう。反対に、どのような原作もテレビ局の企画力によって面白くなる可能性があるのだ。

 フジテレビがキャスティングや原作に頼っている限りは、しばらく復興の道は見えないのではないだろうか。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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