右の上下ふたつのイラストが、今回発見されたBpAFPのイメージ図である。(画像:ニチレイ発表資料より)[写真拡大]
産業技術総合研究所と、冷凍食品メーカーとして知られるニチレイは、濃度によって分子同士の連結を生じ、氷の結晶成長を食い止める未知の不凍タンパク質「BpAFP」を魚類から発見した。この発見は、もしかしたら、将来的には「冷凍睡眠」の技術さえも可能とすることになる、その第一歩となるかもしれない。
基礎的なところから話を始めよう。水を凍らせると氷になり、氷を溶かすと水になる。だが、物体を凍結して解凍しても、必ずしも元通りにはならない。例えば、豆腐を凍らせて解凍すると、まったく食感の違う別の物体になってしまう。これを応用して作られるものが高野豆腐である。
豆腐の話はほんの一例であるが、こうしたことは主に、水と氷の分子の構造的特徴が大きく違うことが原因である。通常の氷は、無数の氷核が融合することで塊を形成する。このとき、細胞の破損など、様々な副次的事象が起こる。
よほど単純で原始的な生き物ならともかく、複雑な構造を持つ高等生物を凍結して解凍しても生き返らないのだが、それもこれに由来するものであり、冷凍睡眠技術がSF小説の中にしか姿を見せないのも同じ理由による。
さて、では今回の研究を見てみよう。今回発見されたBpAFPは、まったく新しいタイプの不凍タンパク質(AFP)であるという。
過去に知られていた不凍タンパク質は、氷核の一部に結合するタイプと、全面に結合するタイプとがあるのだが、このBpAFPは、高機能型APFであり、高濃度になるほど氷核への結合範囲が拡大する性質を持っているという。つまり、これにより、「物体そのものに大きな悪影響を及ぼさずに」物体を凍らせられるようになるかもしれないのだ。
高機能AFPそのものはまったく未知のものではないが、既知の高機能AFPは量産が難しい物質であり、BpAFPには量産性の面からも大きなメリットがある。
この研究の今後の展望であるが、稀少性の高い試薬や移植用細胞などを傷つけることなく凍結できるようにするために、まずはこのBpAFPの活用法についてさらに検討していくという。
研究の詳細は、英国の科学誌サイエンティフィック・リポーツのオンライン版に掲載されている。(藤沢文太)
関連キーワード産業技術総合研究所(産総研)
スポンサードリンク
- 京大ら、親世代で獲得のストレス耐性が子孫に継承されることを発見
2/15 12:02
- 有害な化学物質が男性の不妊を引き起こす、東北大の研究
2/15 09:11
- 人工網膜で視力を回復される研究、来年度に臨床試験申請へ 2/14 13:10
- 理研ら、他人のiPS細胞使った網膜細胞移植へ、世界に先駆け臨床研究
2/14 11:25
- 魚の「浮き袋」は進化上の発明、カギは「腹側」から「背側」への遺伝子スイッチ 2/12 21:28
スポンサードリンク
「サイエンス」の写真ニュース
-
アイリスオーヤマ、対面操作式の卓上IHコンロ発売 充実した安全機能も
12/ 8 17:58
- クリスマスソング、過剰に聞くとメンタルヘルスに悪影響か 12/ 8 11:19
- Google、Amazon.comに報復 Fire TV経由でのYouTube視聴ブロックへ 12/ 8 11:08
- ATOK、最新版は月額課金でのみ提供へ パッケージ版廃止 12/ 8 11:04
- 農水省、ビワの種子粉末を食べないよう呼びかけ 有害物質含有 12/ 8 11:03
- 所得税改革案合意へ 会社員年収800万円から増税 2020年1月実施 12/ 8 16:28
- 【株式市場】週央の下げ後に手控えた向きの買い戻しなど言われ日経平均は大幅続伸 12/ 8 16:08
-
ミレニアル世代は高級ブランドへの関心高く 意識は「上品」で「シンプル」
12/ 8 07:20
-
阪急うめだ本店、AIを活用した自動会話プログラムで店内案内開始
12/ 7 20:00
- 商工中金で発覚した組織ぐるみの金融不祥事 税金の無駄遣いに見直しを 12/ 7 16:32
-
【トヨタ EV技術説明会(下)】マツダ提唱:油田から車輪へ(Well to Wheel)
12/ 7 10:30
-
「オタク」市場、アイドルやボーカロイドなど引き続き拡大
12/ 7 06:53
広告
広告
広告