より多くの蚊がマラリア感染者に引き寄せられる理由

2017年2月16日 21:24

印刷

記事提供元:スラド

headless 曰く、 マラリア感染者は非感染者と比べ、マラリアを媒介するハマダラカなどの昆虫を多く引き寄せることが知られているが、マラリア原虫が代謝経路で生成する(E)-4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニル二リン酸(HMBPP)が影響するとの研究成果が発表された(論文Ars Technica)。

 ヒトやカはイソプレノイドをメバロン酸経路で生合成するのに対し、マラリア原虫は2-C-メチルエリトリトール-4-リン酸(MEP)経路で生合成する。HMBPPはMEP経路で合成されるイソペンテニル二リン酸(IPP)やジメチルアリル二リン酸(DMAPP)の前駆体だ。

 メンブレンフィーダーとY型管を用い、HMBPPを添加した赤血球(hmbRBCs)と比較用の赤血球(RBCs)でメスのカの誘引実験をしたところ、95%がhmbRBCsを選んだという。一方、血清やグルコース溶液ではHMBPPの添加の有無で有意な差はみられない。

 また、hmbRBCs、RBCsに加え、マラリア原虫に感染した赤血球(tiRBCs、giRBCs)を用いて吸血量を比較したところ、hmbRBCsと感染した赤血球ではRBCsの倍以上という結果になった。抗生物質によりtiRBCsのHMBPP合成を妨げた場合、吸血量はRBCsと同レベルまで減少し、IPPを添加しても大きな変化をみられなかったという。

 さらに、血清を用いた実験では、HMBPPを添加すると5分以内に約80%のカで採餌行動がみられたのに対し、血清のみの場合は20%にとどまった。また、生理食塩水を使用した場合も同様の傾向がみられる。

 hmbRBCやgiRBCsでは二酸化炭素やアルデヒド、モノテルペンの発生量が増加しており、これが誘引力を高めているようだ。つまり、マラリア原虫に感染した赤血球が放出するHMBPPが間接的にカに対する誘引力を高め、直接的に採餌行動を刺激する重要な代謝物とみられる。研究ではこのほか、HMBPPによるカの健康状態や遺伝子発現の変化などについても検討している。

 スラドのコメントを読む | サイエンスセクション | バイオテック | サイエンス | 医療

 関連ストーリー:
フロリダ、遺伝子操作したネッタイシマカの放出実験の実施を地元対策委員会が決定、実験場所は変更へ 2016年11月25日
フロリダで計画されている遺伝子操作したネッタイシマカの放出実験、地元では65%が反対 2016年11月15日
ジカウイルス、親の蚊から子の蚊に垂直感染することが確認される 2016年09月04日
米FDA、遺伝子操作したネッタイシマカの放出実験による環境への重大な影響はないとの最終判断 2016年08月10日

※この記事はスラドから提供を受けて配信しています。

関連キーワード

関連記事