高温超伝導の新しいメカニズムを発見―東大・酒井志朗氏ら

2016年2月9日 21:38

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高温超伝導メカニズムのイメージ図。銅酸化物中の電子は周囲の状況(近くに他の電子がいるかいないか)に応じて、同じ電子があたかも異なる粒子のように振る舞う。一つは結晶中を動き回る準粒子とよばれる状態で、電子が他の電子の作る“薄着”の衣をまとった状態といえる。もう一つが今回の研究で見出された隠れた複合フェルミオン状態であり、電子が“厚着”をして他の電子の創り出す落とし穴に捕われるために、もとの電子とは異なる性格を持つ。複合フェルミオンは宇宙のダークマターのように、今ある実験手段ではよく見えない、捕われて隠れた存在である。(東京大学の発表資料より)

高温超伝導メカニズムのイメージ図。銅酸化物中の電子は周囲の状況(近くに他の電子がいるかいないか)に応じて、同じ電子があたかも異なる粒子のように振る舞う。一つは結晶中を動き回る準粒子とよばれる状態で、電子が他の電子の作る“薄着”の衣をまとった状態といえる。もう一つが今回の研究で見出された隠れた複合フェルミオン状態であり、電子が“厚着”をして他の電子の創り出す落とし穴に捕われるために、もとの電子とは異なる性格を持つ。複合フェルミオンは宇宙のダークマターのように、今ある実験手段ではよく見えない、捕われて隠れた存在である。(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

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 東京大学の酒井志朗助教(現:理化学研究所研究員)らによる国際共同研究グループは、銅酸化物高温超伝導体の超伝導が高温で起きる新しいメカニズムを発見した。

 通常、超伝導は非常に低い温度(典型的には-260℃以下)でのみ起きるが、1986年にベドノルツとミュラーが、それまで知られていなかったほど高い温度で超伝導を示すことを発見した。その後、さらに高温の超伝導物質が続々と発見され、現在、その最高温度は-110℃程度に達している。しかし、そのメカニズムには多くの謎が残されたままとなっている。

 今回の研究では、銅酸化物の電子状態をよく表すと考えられている理論模型について、電子間相互作用の効果を精度よく取り込む最新の理論に基づいた数値計算シミュレーションを行った。その結果、金属状態で特別強い相互作用効果を感じていた(特徴的なエネルギーをもった)電子が、超伝導状態になると突如ほとんど相互作用を感じなくなるという不思議な振る舞いを発見した。

 この振る舞いは、従来のようなボソンが引力を生む理論では説明できないため、研究グループは、偶数個の電子ではなく奇数個の電子で作られる粒子フェルミオンが存在しているのではないかという仮説を立て、その場合の電子の振る舞いを検証した。その結果、上に述べた不思議な振る舞いを含め、数値シミュレーション結果を驚くほど良く再現することができ、さらに電子が複合フェルミオン状態との間を行き来することで、超伝導を高温まで安定化していることが分かった。

 今後は、複合フェルミオンを隠れた存在から引きずり出すために、観測できる実験を考案し、この複合粒子が存在するという理論的予言を実験でも実証するとともに、鉄系超伝導体など他の高温超伝導物質との関連を解明することが期待されている。

 なお、この内容は「Physical Review Letters」に掲載された。論文タイトルは、「Hidden Frmionic Excitation Boosting High-Temperature Superconductivity in Cuprates」。

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