マイクロメーターサイズの液滴挙動の観察に成功―苷蔗氏ら

2016年1月23日 10:27

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液滴挙動の連続写真例(撮影間隔:約0.006秒、液滴径約100μm、ヒータ温度310oC設定)(東京大学などの発表資料より)

液滴挙動の連続写真例(撮影間隔:約0.006秒、液滴径約100μm、ヒータ温度310oC設定)(東京大学などの発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の苷蔗特任准教授らの研究グループは、ミストを用いた化学気相蒸着法により、薄膜を形成する際のミスト液滴挙動のモデル化と流動解析に取り組み、マイクロメーターサイズの液滴挙動の観察に成功した。

 ナノレベルで制御され高度な機能を持つ高品質/高均質薄膜は、半導体デバイスやコーティングの分野に広く用いられている。そして、これらの高品質/高均質薄膜を形成するためのプロセスとしては、プロセス内部を真空にする真空成膜プロセスが主流となっている。しかし、真空成膜プロセスは大量のエネルギーを要するという課題があった。

 今回の研究では、成膜制御性に優れた気相成長の概念を非真空成膜プロセスに導入した「ミストデポジション法」を開発した、この方法では、原料の溶液に超音波を加え、発生した直径数マイクロメーターの霧(ミスト)をキャリアガスで成膜部に輸送し、成膜部を加熱することで真空とすることなく大気圧下において直接膜を形成する。

 そして、その研究開発の中で、詳細な液滴挙動の把握のために、実体顕微鏡とハイスピードカメラを組み合わせ、直径が数十~数百マイクロメーターの液滴の挙動を観察した。また、直径数ミリメーター程度の液滴を高温の固体に滴下すると液滴は固体の温度に応じて核沸騰状態、遷移沸騰状態、膜沸騰状態(ライデンフロスト現象)となること知られているが、対象とする直径が数十から数百マイクロメーターと微小な液滴では、上記のどの状態においても、高温の固体からの熱により液滴の一部が蒸発し、体積膨張により固体面から飛び跳ね複雑な挙動を示すものが存在していた。また、液滴の運動が加速されるものが存在ことも確かめられた。

 今後は、さらに微小な液滴挙動のモデル化を進めると同時に、得られたモデルからのミストデポジション法に適した装置設計手法の開発を推し進め、これまで成膜が困難であった立体構造物やより広範囲への均質成膜に貢献できると期待されている。

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