運動すると体重が減らなくても肝脂肪が減る―筑波大、男性肥満者169名を解析

2015年4月4日 17:40

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非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病態因子の変化を示す図(筑波大学の発表資料より)

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病態因子の変化を示す図(筑波大学の発表資料より)[写真拡大]

 筑波大学は3日、 医学医療系正田純一教授らの研究グループが、「中高強度の身体活動量は、非アルコール性脂肪性肝疾患の肝病態を改善させる」ことを解析したと発表した。週に250分以上の中高強度の身体活動の実践は、肥満者の肝臓における脂肪蓄積、炎症、酸化ストレスを抑止する効果があり、その効果は、体重の減少とは独立に作用することなどがわかった。

 研究グループは、同大体育系の田中喜代次教授の研究室が実施した減量介入試験(2009-2013年)に参加した男性肥満者169名の成績に関して解析(後ろ向き解析)を行い、運動が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の肝病態に与える影響を、その強度と量の観点より詳細に検討した。

 その結果、身体活動量を増やすほど、NAFLD肥満者の身体組成、肝脂肪蓄積、糖脂質代謝、アディポカイン不均衡、炎症・酸化ストレス状態に対する優れた改善効果が確認された。

 特記すべき重要なポイントは、週に250分以上のMVPA(運動によるエネルギー消費量が安静時の3倍以上の運動)の実践は、週150分未満、週150分以上250分未満の実践に比べると、体重減少とは独立して、善玉コレステロールと抗炎症性アディポカインの増加、肝臓の貯蔵鉄と過酸化脂質の減少を導き、酸化ストレス状態や炎症病態を改善する効果が認められたことだ。

 また、末梢単核球の解析より、週に250分以上のMVPAの実践が脂肪酸代謝を制御し、肥満者の肝臓における脂肪蓄積を抑える効果があるものと推測された。この解析により、運動が体重減少を介さずに、NAFLDの肝脂肪蓄積および関連病態因子の改善を誘導する独立した因子であることを、研究チームは世界に先駆けて見出した。

 これらの結果により研究チームは、NAFLD肥満者の病態改善効果を得るためには、適切な食事療法と共に250分/週以上のMVPA量を維持出来る内容のライフスタイルを実践することが有用であると考えられるとしている。

 この研究の成果は、2015年3月27日付で米国肝臓病学会の学術誌「HEPATOLOGY」に論文掲載された。また、同論文は同雑誌のEditorialにて高い評価を受けた。(記事:町田光・記事一覧を見る

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