直近増配発表銘柄はファナックのリードに丸三証券の追撃も手伝いエンジン全開を期待=浅妻昭治

2015年3月23日 11:04

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

 「官製相場」に「官製春闘」がオンしたと思ったら、日経平均株価は、アッという間に1万9000円台に乗せ、東証株価指数(TOPIX)も、7年4カ月ぶりの高値と追随高した。こんなことなら安倍晋三首相のアドバイスを素直に聞いて置くのだったと悔やむことしきりである。当コラムで以前に言及した今年2月24日午前中に開かれた講演会での安倍首相のスピーチである。同首相は、このとき「エンジン全開の今年の日本を皆さん、買わない手はないとは思いませんか」とアピールしたのである。

 兜町暮らしが長くなると、株価の上げ材料や要人発言などについてはついウラを取りウラ読みをすることが習い性になってしまっている。安倍首相のスピーチが市場に伝えられたときも、日経平均株価は、年初来安値から1800円高して直近の2007年高値を更新してはいたものの、まだギリシャの債務問題の再燃懸念が残り、為替相場も円安に動くか円高に振れるか不透明感が続くなか、賞味期限切れが懸念された「アベノミクス」のテコ入れ発言、来たるべく4月の統一地方選挙に向けた口先介入などとウラ読みし過ぎ、とても「エンジン全開」などとはいえないと思い込んだのがいけなかったようだ。

 その後のプロセスをみると、「エンジン全開」はともかく、安倍首相のアピール通りにエンジンの回転数が急ピッチにアップしていることを認めざるを得ない。「企業は賃上げにも動き、株主への配当も厚くし、空前の規模の手元資金を設備投資や企業買収にも積極的に活用し始めた」と安倍首相のスピーチ通りの展開となっているからである。

 株式相場も、メガバンクが海外投資家の先物買い主導で上値を追い、これが大手薬品株買いにつながり、ドル高・円安の進行とともに輸出主力株の上場来高値更新を牽引してエンジンが高速回転し始めた印象を強めた。このシンボル株は、もちろんファナック <6954> である。米投資ファンドの自社株買い提案に対しては、約1000億円を投資する新工場建設で応じ、さらに以前の情報開示姿勢からは考えられない株主との対話路線への転換に向け窓口部署を設置し、増配や自社株買いも検討すると伝えられた。

 株価は、このIP(投資家広報)積極化とともに窓を開けて急伸、上場来高値追いに弾みをつけ、株主配分などを増やすガバナンス(企業統治)関連株への注目度が高まった。これに拍車を掛けたのが丸三証券 <8613> であった。今3月期の期末配当を特別配当40円を上乗せして70円として中間配当と合わせて年間85円(前期実績55円)に増配、しかもこの特別配当を2017年3月期まで継続する配当政策の変更を発表したからだ。株価は、ストップ高を交えて昨年来高値までわずか5日間で5割高し、増配銘柄や自社株式取得銘柄をマーケットのメーンテーマ株に浮上させている。

 もともと企業の配当政策は、昨年5月にアマダ <6113> が、株主への100%還元を表明して増配と自社株式取得を発表したことを加速要因に積極化され、今3月期は、上場企業の3割が増配をし、配当総額は、連続して過去最高を更新すると観測されている。それが、3月期決算会社の期末接近とともに、株高に乗り遅れてはならじとばかりに増配発表が相次いで増配会社が拡大し、さらに今週26日の配当権利付き最終売買日に向けラッシュも予想されるところとなっている。

 そこで今週の当コラムでは、安倍首相の講演会以来、前週末20日までに増配を発表した3月期決算会社の直近増配銘柄から有望銘柄をセレクトしてみたい。増配理由は、本来の配当政策の変更から業績上方修正に伴うもの、創業記念配当、市場変更記念配当などさまざまで、上場市場も、東証第1部から新興市場まで多岐にわたり、銘柄絞り込みには苦労するが、それでも前週末現在で配当利回りが、3%以上に回る高配当株は、インカムゲインとともにキャピタルゲインの値幅効果も期待できるはずでアプローチしたい。(本紙編集長・浅妻昭治)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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