トヨタ自動車がリハビリ用ロボットの臨床研究モデルを開発 今秋より医療機関へ導入

2014年5月30日 09:22

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記事提供元:エコノミックニュース

パートナーロボット「歩行練習アシスト」。麻痺した脚に装着することにより、脚を前方に振り出す動作や、膝を伸ばして体重を支える動作をアシストする。

パートナーロボット「歩行練習アシスト」。麻痺した脚に装着することにより、脚を前方に振り出す動作や、膝を伸ばして体重を支える動作をアシストする。[写真拡大]

 我々は普段何も考えず、意識せず歩いている。しかし、実際の歩行の仕組みはとても複雑で、脚の力だけではなく、腹筋や腰の力などいろんな箇所を使うのだそうだ。もちろん、正常なバランスも必要だ。

 トヨタ自動車<7203>は28日、2011年に発表した「介護・医療支援」領域のパートナーロボット「歩行練習アシスト」と「バランス練習アシスト」を改良し、病気やケガなどで歩行やバランス確保が不自由な方のリハビリテーション支援を目的とした臨床研究モデルを開発したと発表した。

 今回開発した臨床研究モデルは、07年末から藤田保健衛生大学と共同で開発を進めてきたもの。11年より医療機関の協力のもと実証実験を行い、運動学習理論に基づいたトレーニング機能の適正化やロボットの装着方法の簡易化などの改良を施し、リハビリテーション現場での使い勝手を大幅に向上させている。

 歩行練習アシストは、下肢麻痺で歩行が不自由な方が自然な歩行を習得できるようリハビリテーション初期段階から支援するロボット。麻痺した脚に装着することにより、脚を前方に振り出す動作や、膝を伸ばして体重を支える動作をアシストする。サイズは幅1200×長さ2560×高さ2350 mm。

 今回の改良点は、脚部装着部分を吊り上げる機構を備え、練習者にかかるロボットの重量負荷を低減した。練習者の回復の度合いに合わせて、ロボットからのアシスト量の変更が可能である。また、関節の角度などの歩行データをモニタリングし、歩行の状態を音や画像で練習者にリアルタイムで知らせることが可能。さらに、短時間で装着可能な構造に変更した。

 バランス練習アシストは、バランス確保が不自由な方が、ゲーム感覚で飽きずに楽しくリハビリテーションを継続できるよう支援するロボット。立ち乗り型パーソナル移動支援ロボット「Winglet」の倒立二輪技術を活用しており、練習者の前後・左右の体重移動がゲームの中のキャラクターと連動する。サイズは幅1870×長さ3040×高さ2350 mm。

 今回の改良点は、重心移動練習(前後、左右)と重心保持練習ができる3種類のゲーム(テニス、スキー、ロデオ)を設定し、練習者とゲームキャラクターの動作の連動性を向上した。また、練習者のバランス機能の回復の度合いに合わせて練習難易度を自動的に設定できる。

 トヨタは、これらの早期実用化を目指しており、2014年秋より、臨床研究モデルをそれぞれ20拠点の医療機関に有償で提供し、今後の臨床研究に活用してもらう方針である。なお、今回開発した臨床研究モデルは、2014年6月5日から7日まで開催される第51回日本リハビリテーション医学会学術集会(名古屋国際会議場)への出展を予定している。

 前述したように、歩行というものは実は複雑な仕組みなのだ。このため、歩行が不自由な方のリハビリは大変だと聞く。早期に実用化され、世のリハビリ状況が進化することを願う。(編集担当:慶尾六郎)

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