直近東証1部市場変更株は決算発表を先取りして「1部半銘柄」的な個別業績相場発進を期待=浅妻昭治

2014年5月7日 10:38

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  寿スピリッツ <2222> 、AGS <3648> 、東洋ビジネスエンジニアリング <4828> と並べて、この3銘柄にはいくつかの共通点があるのだが、お分かりになるだろうか?いずれも3月期決算会社で、この大型連休の谷間に年初来高値を更新した銘柄である。また、今年4月早々の当コラムで取り上げたように今年、東証第1部に市場変更されたことも共通している。

  年初来高値を更新中ということは、今年4月7~8日の日銀の前々回の金融政策決定会合以来、日経平均株価が、年初来安値を更新して底値圏推移が続き、東証第1部売買代金が、連続して活況の目安となる2兆円を下回る閑散相場環境下、数少ない逆行高銘柄であることを表している。実際、3銘柄の東証1部指定替え承認から年初来高値までの平均上昇率は、32.7%となっており、大きく日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)をオーバーパフォームしている。株式市場では、新規株式公開(IPO)株が人気化したときは、連想を強めて直近IPO株にまで買いの手を広げるのが、妙味のある投資方法として定着しているが、それと同様に直近東証1部市場変更株相場が、一貫上昇相場を展開中ということになる。

  この好パフォーマンスは、もちろん東証1部指定替えでTOPIXに参入され、TOPIX連動型のファンドの買い需要が発生する需給好転要因に多くを負っている。さらに東証1部に上場早々の銘柄は、時価総額が小さい中小型株が大半で、かつては「1部半銘柄」ともいわれ、個人投資家主導の材料株思惑も底流しており、これが意識された側面もある。

  大型連休明け後の5月相場が、どう展開するかにもよるが、もし5月相場が、連休明け後も、またも緊迫化したウクライナ情勢への先行き懸念や円高反転などで連休前と同様に閑散商状が続き、日経平均株価の値幅も小幅往来にとどまり、あるいは下値を再確認するようなら、この東証1部指定替え銘柄に再度の出番が期待できるはずだ。とくに指定替えされた銘柄のうち3月期決算会社は、連休明けの5月8日から15日にかけて決算発表を予定しており、この決算動向次第では好業績銘柄として選別物色がさらに高まるだけに、逆行高展開も想定される。

  実はこの予告編ともいうべき業績修正が、連休前の2日大引け後にあった。今年2月28日に東証マザーズから東証1部に市場変更されたスターティア <3393> が、前3月期業績の上方修正と普通配当・記念配当の増配を発表する一方、3月18日に東証2部から1部に指定替えされたクロップス <9428> は、逆に昨年10月に下方修正した前期業績の再下方修正を発表したのである。この業績修正がどのように株価評価されるかは、連休明け後の動向をウオッチしなくてはならないが、少なくとも上方修正のスターティアには、連続最高純益更新の更新幅を拡大するとしてポジティブに評価される可能性がある。

  先例があるのである。今年3月7日に東証2部から1部に指定替えされたアーレスティ <5852> は、4月25日に前3月期業績の4回目の上方修正を発表、指定替え承認とともに実施した公募増資(発行価格899円)を嫌う株価下ぶれをカバーして発行価格水準までリカバーし、同じく28日に前期業績を再上方修正したパンチ工業 <6165> も、同じくファイナンスを嫌気売りした大幅安から1000円台目前まで持ち直した。

  もちろん株価により大きく影響を与えるのは、すでに織り込み済みとなった前期業績ではなく、今期業績の見通しである。この場合、例えば今年4月22日に東証マザーズから東証1部に市場変更されたコロプラ <3668> は、4月30日に発表した9月期第2四半期(2Q)累計の営業利益が、前年同期に対して6.2倍と大きく伸びたが、市場コンセンサスに未達となり、9月通期営業利益を期初予想の据え置きとしたことが響いて300円安、年初来安値目前まで急落した。こうしたケースもあって注意が必要だが、直近東証1部市場変更株には、決算発表をマークして個別業績相場を展開する余地があること示唆しているとみて間違いないはずである。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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