絶好調の住宅メーカーに消費増税後の反動減を暗示するデータあり

2014年1月5日 19:53

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記事提供元:エコノミックニュース

 住宅メーカー大手3社、積水ハウス<1928>、大和ハウス工業<1925>、住友林業<1911>の決算は、四半期実績も通期見通しも2ケタ以上の増収増益が並び、絶好調だ。

 積水ハウスの第3四半期(2~10月)の売上高は10.2%増、四半期純利益は89.6%増、通期の売上高は12.5%増、当期純利益は65.7%増を見込んでいる。大和ハウス工業の第2四半期(4~9月)の売上高は29.2%増、四半期純利益は11.5%増、通期の売上高は27.0%増、当期純利益は32.8%増を見込んでいる。住友林業の第2四半期(4~9月)の売上高は10.9%増、四半期純利益は206.9%増(約3倍)、通期の売上高は10.6%増、当期純利益は31.9増を見込んでいる。

 アベノミクスによる景況感の改善、2014年4月に迫った消費増税前の駆け込み需要による受注の大幅増、住宅ローン減税の拡充など、住宅業界には追い風が吹いて需要が大きく拡大し、それが好決算にあらわれた。

 最大手の積水ハウスは「足元の受注は想定以上で業績は順調に進捗している」と説明しているが、住宅業界に今後の不安要素がないわけではない。それは消費増税後の需要の反動減で、それを暗示するデータが早くも10月、11月の受注実績にあらわれている。

■10、11月の受注の落ち込みが意味するもの

 住宅メーカー大手3社は毎月の受注実績を公表している。

 積水ハウスの受注速報によると、今期は2月から9月まで全体の受注高が連続して前年同月の100%以上を続けてきたが、10月は97%と初めて100%を下回った。11月も91%で前年同月割れが2ヵ月続いている。9月まで110%をコンスタントに超えて好調だった戸建住宅も、10月84%、11月68%と急ブレーキがかかった。

 大和ハウス工業の戸建住宅の月次受注状況によると、今期は4月から9月までは前年同月比伸び率がずっと+15%を超え、9月は+35%もあったが、10月は+7%と1ケタの伸びになり、11月は-4%とマイナスまで落ち込んだ。

 住友林業の受注実績(金額ベース)によると、今期は5月の+11%を除けば4月から9月まで前年同月比で+24%以上の伸びを続け、9月は+65%だったが、10月は一転してマイナス30%まで急落。11月もマイナス28%だった。

 3社とも落ち込んだのは受注高なので、今期末を通り越して来期の業績に響いてくるだろう。

 10月以降の受注の落ち込みの要因は、注文住宅の物件価格にかかる消費税が2014年4月以降の完成・引き渡しでも現行税率の5%ですむ措置の期限が9月30日までの契約分となっていたことである。つまり戸建住宅については、消費増税前の駆け込み需要の盛り上がりも、増税後の需要反動減も、4月1日の半年前に前倒しでやってきたのだ。

 積水ハウスは主力分野の戸建住宅の受注が11月は前年同月の7割以下に落ち込み、住友林業も10月の受注が9月の3割減で、大和ハウス工業も10、11月の受注伸び率がマイナスまで急減したというこのデータは、消費増税後の反動減が意外に大きくなりそうなことを暗示している。各社ともマンション、リフォームなど戸建住宅以外の事業の多くは売上高が前年同期比プラスの好調が続いているが、「消費増税後の需要反動減は心配ない」と言い切れるだろうか。

■住宅業界は来年4~6月期が正念場になる

 積水ハウスは1月期決算。今期の本決算は利益が過去最高になるのはほぼ確実。来期の第1四半期(2~4月)も3月31日までの駆け込み需要ギリギリ最終分を取り込むので落ち込みは目立たないかもしれないが、第2四半期(2~7月期)あたりから反動減で業績が変調をきたしそうだ。大和ハウス工業と住友林業は3月期決算。消費税が5%から8%に引き上げられる日から始まる来期の第1四半期(4~6月期)から、きっちりと反動減の影響が出てくるだろう。

 「引き渡しが4月以降なら、今買っても、4月以降に買っても消費税は8%で同じだ」と言っている人がいるが、住宅を取得する人がその時に買うのは住宅だけではない。家具や家電製品、場合によってはマイカーも新調するし、引っ越し代もかかる。やはり「税率が5%の3月末までに新居に引っ越しを済ませたい」と需要を先食いすることになるだろう。

 さらに、個人間の仲介取引であれば消費税がかからない「中古住宅」という〃敵〃もいる。4月の増税以降は「消費税0%」というメリットにひかれて、築浅の物件ならあえて中古を選ぶ人も増えそうだ。それは新築の需要を圧迫する。

 4月以降、政府が新築住宅取得の奨励策を矢継ぎ早に打ち出してテコ入れを図ったり、日銀が景気浮揚のために追加金融緩和を実施して住宅ローン金利が低下することも考えられる。また、4月以降は3月までの駆け込み需要で高騰した資材価格や大工の工賃が下がって住宅の新築価格が下落し、「かえってお買い得になる」という予想も聞かれる。しかしそれは、消費税率の3%アップと比べればはるかに不確定な要素。実際どうなるか、その時になるまでわからない。

 やはり、消費増税が実施される4月以降は住宅メーカーには正念場がくると考えたほうがいいだろう。特に4~6月期は逆風が強くなると思われる。(編集担当:寺尾淳)

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