【編集長の視点】当面は不確かな業績相場より材料株優先相場と割り切ってNISA関連株に柔軟に対応=浅妻昭治

2013年10月28日 10:42

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【浅妻昭治のマーケット・センサー】

  安川電機 <6506> で負け(株価下落)て、日本電産 <6594> 、日立製作所 <6501> 、村田製作所 <6981> で勝ち(株価上昇)、信越化学工業 <4063> 、富士重工業 <7270> 、キヤノン <7751> でまた負けた。10月中旬から発表が始まった3月期決算会社の4~9月期(第2四半期累計、2Q累計)業績に対する株価反応度である。

  確かに「業績」をポイントにして株価の高安が分かれたのだから、期待されていた「業績相場」といえないことはない。しかし、業績を再下方修正したキャノンが売られたのは当然としても、上方修正した安川電機や富士重工業、増益となった信越化学が売られるのは、どうにも不思議と首を捻らざるを得ない。市場コンセンサスを下回った、材料が出尽くした、材料織り込み済みだなどとマーケット・コメントされているようだが、業績への評価基準が曖昧で、株価の虫の居所が悪かっただけと納得させなければならないと諦めさせられた面も否定できない。今週30日をピークとして進行する3月期決算会社の2Q累計決算発表では、さらにコンセンサスの定まらない業績評価に振り回されないかと不確かな業績相場に懸念は募る。

  市場参加者の多くが、この気紛れな「業績相場」よりも目を奪われたのは新興市場株の急騰である。新規株式公開(IPO)株が、昨年12月20日以来、36銘柄連続で初値が、公開価格を上回る連勝記録を伸ばし、しかもその公開価格に対する初値の上昇率を表す初値平均倍率が、倍を超す高人気となったからだ。しかも、10月に入ってからは、既上場の類似企業株までが、従来はIPO株投資に際しては、保有株を換金売りして、乗り換え投資する対象だったものが、一転して急騰するオマケまでついてきた。

  電力コンサルティングのエナリス <6079> (東マ)のIPOでは、同業態の省電舎 <1711> (東マ)、グリムス <3150> (JQS)、ファーストエスコ <9514> (東マ)が、ストップ高でツレ高し、電子書籍のメディアドゥ <3678> (東マ)のIPO上場承認では、同業のパピレス <3641> (JQS)、イーブックイニシアティブジャパン <3658> (東1)が急騰、M&A仲介のM&Aキャピタルパートナーズ <6080> (東マ)の上場承認とともに、同業態の日本M&Aセンター <2127> (東1)、GCAサヴィアン <2174> (東1)がツレ高するといった具合である。

  前週末には、スマートフォン向けの無料通話アプリを展開するLINE(東京都渋谷区)の来夏のIPO観測から、関連事業を展開する新興市場株の軒並みのストップ高まで飛び出した。新興市場株は、このIPO関連株に現在調整中の定番のバイオ株、ゲーム株の人気が復活する揃い踏みになるようなら、東証1部の主力株よりも値動きが軽く大きい新興市場シフトがさらに強まる可能性もある。

  業績相場に期待を高める市場参加者にしろ、新興市場にターゲットを定める投資家にしろ、この秋から年末に向けての年内相場は、まだ一山も一波乱どころか、二山も二波乱もあるはずだと判断していることは間違いない。11月は、ヘッジファンドの12月決算末を控えた「45日ルール」に基づく解約売りや、来年1月からの証券優遇税制廃止、NISA(少額投資非課税制度)導入を前にした保有株の益出し売りの心配があり、新興市場では12月のIPOラッシュも観測されているからだ。とすれば、ここからはあらかじめ相場のトレンドやテーマを想定して決め打ちするよりは、目の前の一銘柄、一銘柄ごとに柔軟に機敏に対処する材料株相場と割り切って対処する方が、無難ということになりそうだ。

  この材料株投資で注目して置きたいセクター株がある。ちょっと早いが、NISA関連株である。このNISAは目下、証券各社、銀行各行が口座開設に向けに営業アタックを掛けているところだが、開設されたNISA口座でどのような金融商品に投資が集中するかは、株式市場ばかりか、上場企業にとっても大きな問題となっている。上場会社にとっては、少なくとも5年間は自社株を保有してくれる安定株主の獲得は、自社商品の販売先の確保だけでなく、自社株式の流動性の向上、投資家層の拡大・多様化、株価値上がりにつながり、先々には資金調達などの資本政策の発動でも重要なサポート役となってくれるからである。このため、上場会社は、NISA向けに自社株をアピールする株主優遇策を打ち出している。このNISA関連株に年内相場で先取りの一山、二山を想定して注目したいのである。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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