【龍谷大学】生物多様性の実測データを自然資本の会計評価へ ―ネイチャーポジティブの地域実装をめざす研究が住友財団の助成に採択―
配信日時: 2026-11-04 11:20:11


【本件のポイント】
・龍谷大学 生物多様性科学研究センターの研究プロジェクトが、住友財団の2026年度「環境研究助成・課題研究」に採択。今秋より2年間の研究を実施
・環境DNAの実測データを用いた「BCCI(生物多様性保全総合指数①)」を基盤に、自然資本を資産・負債・損益の観点から評価する新たな指標「NPCI」の開発をめざす
・生態学・会計学・金融・経営の知見を融合し、滋賀県をフィールドに地域の企業や金融機関、自治体での活用を検証。2027年4月開設予定の環境サステナビリティ学部②における学際的・実践的な研究の一例に
【本件の概要】
龍谷大学 生物多様性科学研究センター長の山中裕樹教授らが進める研究プロジェクト「ネイチャーポジティブの地域実装を支える学際的自然資本評価指数の開発と社会実証」が、公益財団法人住友財団の2026年度「環境研究助成・課題研究」に採択されました。研究期間は、2026年11月から2年間を予定しています。
本研究では、環境DNA分析による実測データを用いて生物多様性を評価する「BCCI(Biodiversity Conservation Composite Index:生物多様性保全総合指数)」を基盤に、自然資本を「資産・負債・損益」の観点から評価する新たな指標「NPCI(Nature Positive Composite Index:自然再興総合指数)」の開発と社会実証に取り組みます。
生態学と自然資本会計、地域金融などの知見を融合し、地域の企業や自治体が自然環境の保全・回復に取り組むための新たな評価の仕組みづくりをめざします。
【プロジェクトの全体像】
【プロジェクトの背景】
生物多様性の損失を食い止め、自然を回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現に向け、企業活動が自然環境に与える影響や依存度を評価・開示する動きが国際的に広がっています。一方、自然環境の評価には、推定モデルや代理指標が用いられることも多く、地域で実際に測定したデータに基づく評価基盤が十分に整っていないのが現状です。また、生態系の「状態」を示す情報を開示するだけでなく、自然環境の保全・回復にどれだけの費用が必要なのかを評価し、経営や投資の判断に生かす仕組み作りも課題となっています。こうした仕組みは、自然環境に関わる企業だけでなく、地域の自然を守るために予算を投じる自治体にとっても重要です。
【プロジェクトの概要】
本プロジェクトは、下記5ステップで「自然再興総合指数(NPCI)」の開発・評価・実装を進めます。
1. 琵琶湖の生物多様性を実測データから評価
これまでの研究では、環境DNA分析を用いて地域の生物多様性を調べ、その状態を多面的に評価する「生物多様性保全総合指数(BCCI)」を開発してきました。琵琶湖湖岸部100地点の実測データなどを活用し、地域の自然環境を客観的に評価するための基盤を構築しました。
2. 生物多様性の評価を、自然資本の会計評価へ
今回の研究では、BCCIによる自然環境の状態評価を発展させ、自然環境の保全・回復に必要な費用や、取り組みによる改善を評価する仕組みをめざします。自然環境の状態を把握するだけでなく、企業や自治体が具体的な意思決定に生かせる評価へとつなげることが狙いです。
3. 新たな指標「自然再興総合指数(NPCI)」を開発
BCCIによる実測データを基盤に、自然資本を「資産・負債・損益」の観点から評価する「自然再興総合指数(NPCI)」を開発します。自然環境の状態を基準となる状態と比較し、その差を保全・回復に必要な費用などと結びつけることで、自然資本の変化を評価する仕組みを検討します。
4. 琵琶湖から里山・企業の事業地へ、複数の環境で検証
琵琶湖に加え、たねやグループ(株式会社たねや・株式会社クラブハリエ)の事業地「ラ コリーナ近江八幡」や東近江市などをフィールドとして、異なる環境での評価手法を検証します。実際の自然環境の状態や保全・回復の取り組みを踏まえ、BCCIの精緻化とNPCIの開発を進めます。
5. 地域金融や企業の意思決定に活用し、社会実装をめざす
開発した指標を、滋賀銀行の預金商品やファンドなどで活用する可能性を検討します。生態学、自然資本会計、地域金融、企業経営の知見を組み合わせ、自然環境の保全・回復を地域の企業や自治体の意思決定につなげる仕組みの構築をめざします。
【プロジェクト体制】
「生物多様性保全総合指数(BCCI)」を開発した龍谷大学・公益財団法人東近江三方よし基金・株式会社滋賀銀行の三者の間では、これまでも長期的な連携を見据えた議論や協働を展開してきました。本プロジェクトではこの三者に加えて、新たに株式会社たねやの小玉 恵氏、会計学が専門の金森 絵里教授が参加し、滋賀県において近未来のネイチャーポジティブ社会に求められる生物多様性保全指標を高次のレベルで議論・開発・実証研究する最良の連携チームが組織されたと考えています。
また、本プロジェクトは、文理の枠を超えた探究を基盤に産業や地域社会と連携しながら持続可能な社会の実現を目指す「環境サステナビリティ学部」(2027年4月開設)のビジョンを実践する取り組みの一つです。
研究メンバー:
• 山中 裕樹(研究代表者) 龍谷大学 先端理工学部 環境科学課程 教授 ※
龍谷大学 生物多様性科学研究センター長
• 三木 健 龍谷大学 先端理工学部 環境科学課程 教授 ※
• 岸本 圭子 龍谷大学 先端理工学部 環境科学課程 准教授 ※
• 山口 美知子氏 公益財団法人東近江三方よし基金 シニアフェロー ※
• 金森 絵里氏 立命館大学 経営学部 教授 ※
• 宇佐見 剛氏 株式会社滋賀銀行 総合企画部サステナブル戦略室 サステナブル推進グループ長
• 小玉 恵氏 株式会社たねや 経営本部 本部長
※山中教授、三木教授、岸本准教授、山口氏、金森教授は、2027年度より本学環境サステナビリティ学部に着任予定。
【研究代表者コメント】
山中 裕樹 教授(生物多様性科学研究センター長)
「自然環境を守り、回復させることが、地域の企業や自治体にとってどのような意味を持つのか。それを、実際の環境データと、生物多様性の保全・回復に必要な費用の両面から評価できる仕組みをつくりたいと考えています。
これまで琵琶湖の環境DNA調査・分析などを通じて、生物多様性の状態を客観的に捉えるための研究を進めてきました。今回の研究では、その成果を自然資本の会計評価や地域金融の仕組みと結びつけ、自然環境の保全・回復を地域の具体的な意思決定につなげることを目標とします。学術的な指標開発だけで完結させず、企業や金融機関、地域の皆さまと連携しながら、ネイチャーポジティブの達成度合いを事業者が客観的に評価できる仕組みへと発展させていきます。」
【用語解説】
① 総合指数(Composite Index)
経済分野や社会政策分野などで個別指標(例:品目ごとの生産量や株価、平均寿命や平均就学年数等)の動きを、一定の基準や加重方式に基づいて総合的に数値化した指標で、個々の指標だけでは捉えにくい全体の動向や水準を、ひとつの数値で示すために用いられる。
環境DNAによる最先端の生物多様性測定技術と、生態データを統合した「BCCI(生物多様性保全総合指数)」の研究開発については、センターHPを参照。https://biodiversity.ryukoku.ac.jp/social/social-1177/
② 環境サステナビリティ学部
2027年4月に大津市にあるびわ湖大津キャンパス(現在の名称は「瀬田キャンパス」)に新設。文系・理系を問わず、様々な学問の基礎に触れ、確信となった各自の興味に基づき選択できる5つの「専門教育プログラム」を提供。地域デザイン、ネイチャーポジティブ経営、生物多様性回復、資源循環利用、持続的水資源管理といった専門性を深め、実践的に課題解決に向き合う次世代の環境人材育成をめざします。
特設サイト https://www.ryukoku.ac.jp/newf2/about/
本件の取材を希望される場合は、下記の問い合せ先までご連絡ください。
問い合わせ先:
龍谷大学 研究・社会実装推進部(生物多様性科学研究センター)
Tel 077-543-7746 e-mail ryukoku.biodiv@gmail.com https://biodiversity.ryukoku.ac.jp/
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/
プレスリリース情報提供元:Digital PR Platform
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