量子CAEの研究開発に向けた常微分方程式の線形化ライブラリ「lin-ode」を開発

プレスリリース発表元企業:QunaSys

配信日時: 2026-10-26 14:00:00

3種類の線形化方式を共通の枠組みで扱い、大規模計算の前処理を効率化



[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/41464/88/41464-88-bd5399fafd77fba44676be38be096358-1672x941.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


株式会社QunaSys(以下「QunaSys」という)と、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は共同で、非線形な常微分方程式を対象とした線形化ライブラリ「lin-ode」を開発しました。非線形な常微分方程式を量子アルゴリズムで扱うには、線形化して表現する必要があります。一方、線形化には複数の方式があり、基底関数系との組み合わせによって変換処理も異なるため、方式の比較や実装の検証を効率よく行うための共通の枠組みが求められていました。量子アルゴリズムの適用に必要となる線形化の処理を共通化し、問題に応じた手法の選択や実装の検証を支援します。本ライブラリは、オープンソースソフトウェア(OSS)として公開しました。ソースコードは、下記の関連情報をご覧ください。
本開発は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)のムーンショット型研究開発事業 目標6における研究開発プロジェクト「誤り耐性量子コンピュータのアプリケーション研究開発」(プロジェクトマネージャー:大阪大学 量子情報・量子生命研究センター 御手洗 光祐 准教授)の一環として実施しました。産総研マテリアルDX研究センター主任研究員の遠藤 克浩を産総研側の代表者、量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)主任研究員の水野 雄太を連名者とし、量子CAE(Computer Aided Engineering)の基盤技術開発において、株式会社QunaSysがソフトウェア開発を担いました。
lin-odeは、複数の線形化方式と基底関数系を組み合わせ、線形化した方程式の行列表現を扱うことができます。必要な行列要素を指定して取り出せるため、行列全体をあらかじめ生成する必要がありません。チュートリアルや使用例も整備し、非線形現象を対象とする量子CAEのアルゴリズム開発に役立てることを目指しています。
■社会的背景
製品設計や材料開発では、流れや物質の拡散などを計算機上で再現するCAEが広く使われています。これらを記述する非線形な方程式を量子コンピュータで扱うためには、線形な方程式に変換する技術が必要です。
線形化には複数の方式があり、基底関数系によっても変換処理が異なります。また、変換後の行列全体を計算して保存する方法では、前処理が負担となります。そこで、線形化を共通の枠組みで実行し、必要な情報を取り出せるソフトウェアを開発しました。
■ライブラリのポイント
・Koopman、Koopman-von Neumann(KvN)、Liouvilleの3種類の線形化方式に対応
・Carleman、Pivot-switching Carleman、ガウス関数重み付きエルミート多項式の基底関数系に対応 ・数式の構造を保持した内部表現により、指定した行列要素を必要に応じて計算

常微分方程式の右辺を多項式として入力し、線形化方式と基底関数系を指定することで、線形化作用素の行列表現を生成します。方程式は添え字を用いた数式として記述でき、周期境界条件などにも対応します。初期条件や目的関数の基底表現を扱う機能も備えています。
Pythonによる拡張可能な設計とし、APIの説明やチュートリアルを整備しました。使用例には、反応と拡散を表すKPP-Fisher方程式や、非線形な移流と拡散を表すBurgers方程式を収録しています。これらを空間方向に離散化して得られる常微分方程式を対象に、線形化した行列の要素を計算できます。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/41464/88/41464-88-49cda5c35d956aee16138b118793449c-1659x1040.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図1:lin-odeの構成上段は、方程式から線形化作用素を作り、選択した基底関数系で行列表現を得る流れ。下段は、初期値や目的関数をベクトルとして表現する流れを示す。

■今後の予定
QunaSysは、産総研と連携し、線形化方式や基底関数系の比較、実装の検証に活用できる環境を整備 していくことで、量子CAEに関するアルゴリズムの設計・検証を支援していく予定です。
■研究開発体制
研究開発事業:JST ムーンショット型研究開発事業 目標6
研究開発プロジェクト:誤り耐性量子コンピュータのアプリケーション研究開発
プロジェクトマネージャー:御手洗 光祐(大阪大学 量子情報・量子生命研究センター)
課題番号:JPMJMS256J
本ライブラリの開発:株式会社QunaSys、産総研 マテリアルDX研究センター、量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)

用語解説
CAE:Computer Aided Engineeringの略。計算機による解析やシミュレーションを用いて、製品の設計や開発を支援する技術。
線形化:本ライブラリでは、非線形な常微分方程式を、状態の関数や分布などを用いた線形の発展方程式として表すこと。有限個の基底関数で扱う際には近似を伴う。
Koopman表現、Liouville表現、KvN表現:Koopman表現は状態の関数、Liouville表現は確率密度、KvN表現は絶対値の二乗が確率密度に対応する関数の時間変化を、それぞれ線形の作用素で記述する。
基底関数系:関数を展開するために用いる関数の組。選択する基底や打ち切り方によって、行列の大きさや近似精度が変わる。
誤り耐性量子コンピュータ:量子計算中に生じる誤りを訂正しながら、長い計算を安定して実行することを目指す量子コンピュータ。
Pivot-switching Carleman:Carleman線形化による時間発展の解を収束させる正則化手法。K. Endo and K. Z. Takahashi, “Divergence-free algorithms for solving nonlinear differential equations on quantum computers,” Physical Review Research, 8, 013057 (2026).
■関連情報
lin-odeのソースコード(GitHub):https://github.com/Katsuhiro-Endo/lin-ode
■株式会社QunaSysについて
QunaSysは、化学や材料科学をはじめとする産業向け量子アルゴリズムの開発を推進する量子コンピュータソフトウェア企業です。量子機械学習や量子化学に加え、量子技術を活用したCAE(Computer Aided Engineering)分野にも注力し、学術機関、産業界、政府機関と連携しながら、量子コンピュータの産業応用に向けた研究開発を進めています。

会社名:株式会社QunaSys
本社:東京都文京区白山1-13-7 アクア白山ビル9F
代表取締役CEO:楊 天任
設立:2018年2月
URL:https://qunasys.com/

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