特別展「夷酋列像 ―蝦夷地イメージをめぐる 人・物・世界―」開催 12人のアイヌの首長たちを描いた《夷酋列像》から展望する北東アジアの世界―フランス・ブザンソン美術考古博物館と国内の所蔵作品が一堂に会し関西初公開

プレスリリース発表元企業:国立民族学博物館

配信日時: 2015-12-08 17:30:00

 国立民族学博物館(大阪府吹田市千里万博公園10-1)では、特別展「夷酋列像 ―蝦夷地イメージをめぐる 人・物・世界―」を2016年2月25日(木)から開催します。

・特別展 詳細ページ
http://www.minpaku.ac.jp/museum/exhibition/special/20160225/index


 《夷酋列像》とは、松前藩の家老であり画人でもあった蠣崎波響(1764-1826)が、寛政2年(1790)に、藩主の命で描いた12人のアイヌの絵を指します。前年の寛政元年(1789)には、東蝦夷地の東部のアイヌたちが、和人の横暴に対して立ち上がった事件(クナシリ・メナシの戦い)があり、描かれた12人は、戦いに加わったアイヌたちに、戦いをやめるよう説得した有力者たちだといわれています。

 この絵は、制作直後に京都にもたらされ、貴人や知識人たちに披露されて評判をよび、光格天皇の天覧に供されるにいたりました。現在フランスのブザンソン美術考古博物館に所蔵されている11枚と、函館市中央図書館に所蔵されている2点が、蠣崎波響筆と考えられており、これらの模写が、国内に複数現存します。松平定信や松浦静山をはじめとする為政者たちが、この絵に少なからぬ関心を寄せたことが、のこされた複数の模写からうかがえます。

 本展は、蠣崎波響が描いた《夷酋列像》とその模写を中心に据え、この絵をめぐる人の動き、蝦夷地を中心とする北東アジアの交流、為政者達が蝦夷地や「外国」に抱いていた興味関心や危機意識の様相を紹介します。


■開催概要
展覧会名:特別展「夷酋列像 ―蝦夷地イメージをめぐる 人・物・世界―」
会場  :国立民族学博物館 特別展示館
会期  :2016年2月25日(木)~5月10日(火)
     ※ブザンソン美術考古博物館所蔵《夷酋列像》の展示は
      4月19日(火)まで。4月21日(木)からは、国立民族学博物館所蔵の
      「夷酋列像」を全面展開して、展示します。
開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日 :水曜日(5月4日(水・祝)は開館)
観覧料 :一般420円/高校・大学生250円/
     小・中学生110円(本館展示と共通)
主催  :国立民族学博物館、「夷酋列像」展実行委員会
     (北海道博物館、一般財団法人北海道歴史文化財団、北海道新聞社)、
     国立歴史民俗博物館
協力  :ブザンソン市(フランス)、松前町、一般財団法人千里文化財団
後援  :在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、外務省、
     文化庁、北海道教育委員会、公益社団法人北海道アイヌ協会、
     NHK大阪放送局

※本展は、2015年9月5日~11月8日まで北海道博物館で、2015年12月15日~2016年2月7日まで国立歴史民俗博物館で開催されます。


■展示内容
I 夷酋列像の系譜
 蠣崎波響が描いたとされる、フランスのブザンソン美術考古博物館の《夷酋列像》と函館市中央図書館所蔵の御味方蝦夷之図とともに、松平定信筆の詞書を伴う模写(国立民族学博物館所蔵)、平戸藩主 松浦静山の命でつくられた模写(松浦史料博物館所蔵)、徳島藩御用絵師の渡辺広輝による模写(常楽寺所蔵)、真田家に伝来する模写(真田宝物館所蔵)などの諸本や粉本を展示し、模写の系譜や各本の特徴を紹介する。

II 夷酋列像をめぐる人
 《夷酋列像》に描かれたアイヌの首長たち、夷酋列像を描いた蠣崎波響、夷酋列像を閲覧した光格天皇や、知識人たち、評判を聞きつけて模写の制作を望んだ為政者たちと模写を命じられた絵師たちなど、「夷酋列像」の制作に関わった人々を紹介する。そして、蠣崎波響が師事した宋紫石や円山応挙、蠣崎波響と同時代の絵師である月僊や若杉五十八が描いた、中国の仙人や伝説上の人物を描いた絵や洋風画を展示する。それにより《夷酋列像》が、「異人」であると同時に味方の「功臣」であるという、相反する二つの要素を持つアイヌ像をあらわしていることを伝える。

III 夷酋列像をめぐるモノ
 《夷酋列像》に描かれた人物達は、アイヌ文様の施された衣装や、アイヌ独特の木彫りが施された煙草入や小刀に加え、蝦夷錦と称される中国から渡来した絹織物や、西洋の外套や靴など、蝦夷地を中心とした北東アジアの交流によってもたらされた品々が描かれている。これらは、和人にとって、珍しいものであると同時に高級品であり、「異人」であると同時に味方の「功臣」であるというアイヌをあらわすために蠣崎波響によって選ばれたものが描かれていると考えられる。夷酋列像に描かれた、衣装や装身具、狩猟具などの展示を通して、蝦夷地を中心とした北東アジアの交流を紹介する。

IV 夷酋列像をめぐる世界
 「夷酋列像」がつくられた18-19世紀の為政者や知識人達は、蝦夷地や「異国」へ、好奇心や危機感を募らせていた。為政者たちが「夷酋列像」に関心を寄せたのは、こうした時代状況のあらわれである。こうした関心が「夷酋列像」をかたちづくっていったと同時に、「夷酋列像」が、蝦夷地や、ロシアや中国といった「異国」への関心をかたちづくっていった。知識人や為政者達が、蝦夷地や海外にどのようなまなざしを向けていたかを、のこされた絵や書物、地図を通して紹介する。


■関連イベント
【みんぱくゼミナール】
「『夷酋列像』の首長たちがまとう衣装」
日時 :2016年3月19日(土) 13:30~15:00
講師 :佐々木史郎(国立民族学博物館教授)
会場 :国立民族学博物館 講堂
定員 :450名(先着順/申込不要)
参加費:無料

【みんぱくウィークエンドサロン ―研究者と話そう】
「夷酋列像をめぐる、人、物、世界」
日時 :2016年3月6日(日) 14:30~15:30
話者 :日高真吾(国立民族学博物館准教授)
会場 :国立民族学博物館 特別展示館
参加費:無料(要特別展示観覧券/申込不要)


■実行委員長 日高真吾(国立民族学博物館 准教授)
 専門分野は保存科学。元興寺文化財研究所研究員を経て、現職。主な著書に『災害と文化財』(2015)、『女乗物 その発生経緯と装飾性』東海大学出版会(2008年)、編著書に『記憶をつなぐ―津波被害と文化遺産』千里文化財団(2012年)、『博物館への挑戦―何がどこまでできたのか―』園田直子と共編 三好企画(2008年)がある。


■国立民族学博物館とは
 国立民族学博物館(みんぱく)は、1974年6月創設し、1977年11月に開館した博物館をもつ研究所です。文化人類学・民族学に関する調査・研究をおこなうとともに、民族資料の収集・整理・公開などの活動をすすめ、世界の諸民族の社会と文化に関する情報を人々に提供し、諸民族についての認識と理解を深めることを目的としています。

所在地 : 〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
交通  : 大阪・万博公園内
      大阪モノレール「万博記念公園駅」・「公園東口駅」徒歩約15分
      開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 : 水曜日(水曜日が祝日の場合は翌日が休館)、
      年末年始(12月28日~1月4日)
URL   : http://www.minpaku.ac.jp/
Facebook: http://www.facebook.com/MINPAKU.official
Twitter : http://twitter.com/MINPAKUofficial

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