Windows版gpu-unlock、RTX 3090でAI演算性能向上を報告―自動起動にも対応

2026年10月27日 18:45

印刷

記事提供元:Tech Times

(NVIDIA)

(NVIDIA)[写真拡大]

GeForceの一部Tensor Core演算の命令発行レートを変更するオープンソースツール「gpu-unlock」に、Windows向けの実装が登場した。開発者impacifistは2026年10月24日、特定のRTX 3090搭載PCで自動解除からWindows起動までを確認した「Windows-GPU-UNLOCK v0.3.1」を公開した。

Linux向けプロジェクトや派生版でも、行列演算性能の向上が報告されている。効果は計算精度や処理内容、電力設定によって変わり、Windows版の導入には機種ごとの厳密な互換性確認とソースコードからのビルドが必要だ。

■Windows版は自動解除からOS起動までを確認

Windows-GPU-UNLOCKは、Windowsが起動する前のUEFI環境でGPUの設定を変更する実験的なアプリケーションだ。ZagittaによるLinux向けgpu-unlockや、先行するUEFI実装を基に開発されている。

10月24日公開のv0.3.1は、v0.1.0、v0.2.0、v0.3.0に続く4件目の公開プレリリースである。ファームウェアがRTXの表示関連ハンドルを3つ以上公開すると事前検査で拒否される問題を修正し、同じ検証機で自動解除とWindowsへの引き継ぎを確認した。

この起動経路では、モニターをRTXに接続したまま、起動途中でUEFI側の表示機能を解放する。画面が一時的に暗転した後、解除処理を経てWindowsへ直接移り、表示が復帰する。開発者は、試験起動と性能確認を済ませた利用者向けに、既定の起動順序へ登録する仕組みも用意している。

v0.3.1はソースコードのみの配布で、利用者のパーティション識別情報に合わせたEFIアプリケーションのビルドが必要だ。必要なファームウェア素材も別途用意する。従来のUSB経由の手動起動方式は、別の経路として残されている。

■対象はFP32累積を使う特定のTensor Core演算

Tensor Coreは、ニューラルネットワークで多用する行列演算を高速に処理する演算器だ。今回の変更対象は、FP16やBF16の入力を使い、計算途中の和をFP32で保持する演算の命令発行レートである。FP16は半精度浮動小数点形式、BF16はAI計算で使われる別の16ビット形式を指す。

Zagittaは、対象のGeForceではこうした演算の命令発行速度がプロ向け製品のおよそ半分に設定されており、gpu-unlockでその設定を変更できると説明している。公開資料が対象に挙げるAmpere世代のチップはGA102、GA103、GA104、GA106だ。実機での結果は、カードや構成ごとに報告されている。

NVIDIAの技術資料でも、同じGA102がGeForce RTX 3090、RTX 3080、プロ向けのRTX A6000、データセンター向けのA40に使われていることを確認できる。RTX 3090の公称値は、疎行列向け高速化を含めない場合、FP16入力・FP16累積で142 TFLOPS、FP16入力・FP32累積で71 TFLOPSとなっており、累積精度による処理能力の違いが示されている。

gpu-unlockは、速度選択用のSS0とSS1というレジスタを変更する。公開実装ではSS0に0x88888888、SS1に0x8を設定するが、その前段には保護された設定へのアクセスを可能にするファームウェア処理もある。GPUファームウェアの脆弱性を利用した先行研究が、この実装の土台となっている。

■Linux版とWindows版で異なる適用経路

Linux版はカーネルモジュールとして動作し、NVIDIAドライバがGPUを初期化する前に解除処理を実行する。レジスタ変更後にPCIeのファンクションレベルリセットを行い、設定を保持した状態で通常のドライバへ引き継ぐ。

NVIDIAドライバ自体を変更する方式ではなく、起動時にモジュールを先に動かす構成だ。このため、新しいドライバの導入時に、そのドライバのプログラムを毎回書き換える作業を省ける。Linux版のコードには、サスペンドからの復帰時に再適用する処理も実装されている。

Windows版は、Windows Boot Managerより前にUEFIアプリケーションを実行する。開発者の記録では、Windows用NVIDIAドライバ617.14を変更せずに起動し、解除後の演算を測定している。カードのVBIOSを書き換える工程も含まれていない。

適用には、GPUが置かれた状態やファームウェア側の所有関係が重要になる。Windows版はGPU、基板のファームウェア、PCI構成などを検査し、対応条件を満たす場合に処理を進める設計だ。

■RTX 3090では行列演算の測定値が上昇

Windows版の開発者が公開した10月20日の記録では、RTX 3090のFP16入力・FP32累積による行列演算は、先の測定の70.55 TFLOPSから、後の測定では125.91 TFLOPSへ上昇した。BF16入力・FP32累積では70.53から128.70 TFLOPSとなった。数値上の増加率は、それぞれ約78.5%、約82.5%だ。

測定にはCUDA 12.6とcuBLAS 12.6を使い、4096×4096の行列演算を同じプログラムで実行した。開発者は、先の測定では解除後にリセット操作を行い、後の測定ではリセットせずWindowsへ移ったと記録している。これは同じPCで異なる起動手順を比較した結果である。

10月24日の自動引き継ぎ経路では、3回の測定の中央値としてFP16が124.97 TFLOPS、BF16が128.93 TFLOPSに達した。v0.3.1の修正ビルドについては起動経路の動作確認を行っており、新たな性能測定は別途行っていない。

Linux側でも、利用者による測定が集まっている。RTX 3090 Tiの公開例では、電力上限450W、8192×8192×8192の密行列演算で、BF16が87.50から157.41 TFLOPSへ約79.9%向上した。同じ測定のFP16は87.46から118.39 TFLOPS、TF32は42.58から82.61 TFLOPSだった。

別の利用者は、仮想マシンに渡したRTX 3090を電力上限420Wで測定し、BF16が77.5から129.6 TFLOPS、TF32が40.2から69.8 TFLOPSへ上がったと報告した。RTX 3080 Tiを315Wに設定した投稿では、BF16が71.59から113.98 TFLOPS、TF32が35.65から65.28 TFLOPSとなっている。

互換性報告をまとめた表には、BF16の一般行列積演算「GEMM」で約25〜81%の向上例がある。各投稿で測定方法や電力上限が異なり、最も低い約25%の例は225Wに制限した構成だった。実際の伸び幅を判断するには、同じカード、同じ電力設定、同じ処理での比較が重要になる。

■画像生成やLLMの入力処理で効果を報告

効果を得やすいのは、対象となるTensor Core演算が処理時間の大きな部分を占める用途だ。GEMMを中心とする処理に加え、拡散モデルの画像生成、LLMの入力をまとめて処理するプリフィル、注意機構を効率化するFlashAttentionなどが候補となる。

Notebookcheckは、RTX 3090 TiでComfyUIを使った画像生成の利用者テストを紹介し、BF16を多用する処理で約47〜59%のスループット向上が報告されたと伝えている。投稿者の検証機はEVGA FTW3 RTX 3090 Tiで、変更前後とも電力上限は450Wだった。

LLMでは、使う計算形式や処理段階によって結果が変わる。Notebookcheckによると、RTX 3090で長い入力を処理した利用者は、プロンプト処理が16%高速化する一方、続くトークン生成速度はほぼ変わらなかったと報告した。

少数の要求を逐次処理するLLMの生成段階では、演算能力よりもモデルの重みを読み出すメモリ帯域が制約になりやすい。INT8などの量子化演算が中心の構成でも、今回変更する演算経路が全体に占める割合によって効果が変わる。ゲーム用途での効果を判断するには、フレームレートを測る追加検証が必要だ。

■RTX 4090の約2倍は命令処理能力の測定値

Ada Lovelace世代のRTX 40シリーズについては、JustAResearcherによるLinux派生版「gpu-unlock-ada」が測定結果を公開している。RTX 4090では、FP16入力・FP32累積が165.6から331.6 TFLOPS、BF16入力・FP32累積が165.5から330.6 TFLOPSとなった。

このベンチマークはデータをレジスタ内に保持して命令を繰り返し、対象命令の処理能力を測るものだ。同じ報告で、INT8、整数の積和演算、通常のFP32演算はおおむね従来の水準にとどまった。実際のアプリケーションでは、行列の形状、データ転送、他の演算に要する時間も全体の速度を左右する。

派生版はSS0とSS1を書き換える共通の発想を使う一方、Ada向けのファームウェアと処理経路を組み込んでいる。RTX 30シリーズ向けのWindows実装と、RTX 4090のLinux測定は、それぞれのプロジェクトと対応条件を確認して利用を判断する必要がある。

■プロ向けGPUやクラウドとの使い分け

GPU製品間の演算能力の違いは、以前から用途別の設計に表れている。NVIDIAのPascal向け技術資料では、GP104の演算ブロックがFP32用128基に対してFP64用4基を備える一方、GP100はFP32用64基に対してFP64用32基を備える。倍精度性能の差には、こうしたハードウェア構成の違いもある。

現在のプロ向け製品には、大容量メモリなどを備えるモデルがある。NVIDIAの日本語製品資料によると、RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Editionは96GBのGDDR7メモリを搭載する。Tom's Hardwareは2026年6月13日、NVIDIAの米国マーケットプレイスで同製品が1万3250ドル(約208万円)、複数の小売店でも1万ドル(約157万円)を超える価格で掲載されていたと報じた。

GeForce RTX 4090は24GBメモリを備え、2022年の国内発売時の想定価格は29万8000円から、米国の発売時価格は1599ドル(約25万1000円)だった。マイナビニュースが伝えた国内の販売形態は、パートナー各社による製品投入である。所有するカードの演算性能を引き出す取り組みは、ローカルで画像生成やAI開発を行う利用者にとって関心の高いテーマとなる。

クラウドとの費用比較では、Lambdaが2026年10月27日の確認時点で、GPUを1基搭載する構成のH100 PCIeを1基・1時間当たり3.29ドル(約517円)、H100 SXMを4.29ドル(約674円)と掲載している。手元のGPUで必要なモデルを処理でき、実際の作業時間を短縮できれば、クラウド利用時間を減らす選択肢になる。比較には、モデルが収まるメモリ容量、処理時間、電力、運用の手間も含める必要がある。

■過去の制限変更と、導入前に確認したい条件

GeForce向けには、動画エンコーダーNVENCの同時実行セッション数を増やす非公式パッチが以前から存在する。VideoCardzによると、公式の上限も2020年に2から3、2023年に5、2024年に8へ増えた。2026年10月27日確認時点のNVIDIA Video Codec SDK 13.1資料では、GeForceなど非認定GPU全体で1システム当たり12セッションとしている。

計算機能の解除では、GA100を使うマイニング向けCMP 170HXの先行例がある。Tom's Hardwareは2026年8月、ソフトウェアによる追加メモリの有効化と演算能力の回復を報じた。同媒体によると、中古価格は約250ドル(約3万9300円)から1000ドル(約15万7000円)超へ上昇していた。

今回のgpu-unlockは、既存のGeForceで特定のAI演算能力を引き出す試みだ。使い続けられる条件は、GPUや基板の仕様、起動環境、将来のソフトウェアとの互換性にも左右される。導入判断には、利用する版の資料と実機報告を確認する必要がある。

Windows版v0.3.1の検証機は、RTX 3090 Founders Edition、ASUS TUF GAMING B650M-PLUS WIFI、BIOS 3057、Ryzen 7 7800X3Dという特定の構成だ。CPUには内蔵GPUがあるが、10月24日の表示復帰試験ではモニターをRTXへ接続し、AMD側のUEFI表示機能を使わずに処理した。

同版の手順は、Windows 11のUEFI環境、Secure Bootの無効化、WindowsのCドライブの完全な復号とBitLocker保護の停止を条件に挙げている。専用のEFIシステムパーティションも必要で、既存のWindows起動用・回復用パーティションを保全し、試験起動後に自動起動を有効化する流れとなる。起動失敗時にWindows Boot Managerへ戻す復旧手順も示されている。

カードごとの差にも注意が必要だ。Linux側には、RTX 3080 Ti 20GBのOEM・評価用構成で、解除処理とレジスタ設定の保持を確認してもBF16性能が上がらなかったという投稿がある。Windows版の長期安定性や自動コールドブートの反復信頼性は追加検証が必要であり、実験用の環境と復旧手段を用意したうえで扱う段階にある。

元記事: NVIDIA RTX GPUs Were Running AI at Half Speed: Free Tool Fixes Firmware Cap on Windows

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード