まさにイギリスらしい表現「pea-souper」とは? イギリス英語のスラング特集 (16)

2023年11月7日 07:55

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 今回紹介するスラングは「pea-souper」といって、まさにイギリスのイメージを象徴するような表現だ。特に首都ロンドンは「霧の都」の通称でも有名だが、その霧の正体と関係するのが今回のスラングである。

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■Pea-souper

 「pea-souper」、直訳すると「えんどう豆のスープっぽい」とでもなるが、これは濃い霧を表すイギリス特有のスラングである。ただの霧ではなく、黄色みや黒みを帯びた濃厚な霧を指す。

 ロンドンでは古くから石炭が使用されていたため、大気汚染によるスモッグが大きな問題となっていた。「霧のロンドン」というイメージはいまだに強いが、決してロマンティックなものではなく、公害が原因の霧だったのだ。

 石炭を大量に燃やしたことによる大気汚染の結果としての霧なので、その色も自然の霧のそれとは異なる。先に述べたように、黄色みや黒みを帯びた独特の色合いをしていた。その様子がえんどう豆のスープをイメージさせるため、「pea-souper」という表現が生まれたのだろう。

 なお、ここでは「えんどう豆のスープ」と訳したが、イメージとしては、スープというよりドロドロの豆の煮物に近い。日本で食べる機会はあまりないが、イギリスでは伝統的な料理の一つである。乾燥えんどう豆を使うため、非常に濃厚、かつ、黄色っぽい色合いに仕上がる。このスープの色合いとドロッとした質感が、ロンドンを中心とした都市部で発生するスモッグを表すのにぴったりだったわけだ。

 ちなみに現在のロンドンは、外国人がイメージするほど霧の都ではない。短期間で数千人が死亡した1952年の「ロンドンスモッグ事件」を機に、大気汚染を減らすために国を挙げてさまざまな取り組みを行ってきた成果である。たとえば、1956年には「Clean Air Act」が施行され、家庭用石炭の使用が厳しく制限された。

 それ以降、都市部の大気は大幅に改善し、今では「pea-souper」と呼ばれるような濃霧はほとんど発生しなくなった。しかし、今でも過去を舞台にしたテレビや映画ではしばしば使われているし、昔のロンドンの風物詩として有名な表現である。

 ・Be careful driving tonight, it's a real pea-souper out there.
 (今夜は運転に気をつけてね、外はまるでえんどう豆のスープみたいな霧がかかっているよ)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

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