地方副業、高い関心度の一方課題も多く

2023年8月19日 18:30

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 お盆休みで帰省した際に、地元で仕事をしてみたいと感じた方も多いのではないだろうか。地方副業は、地元に貢献できるなど魅力があるが、同時に課題も多く抱えている。本記事では、地方副業を取り巻く現状と、その課題について紹介する。

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■地方副業に興味のある人は多い

 地方をはじめとする人手不足は、日本社会にとって深刻な問題だ。3月、リクルートワークス研究所は「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」という研究結果を発表した。これによれば、2040年には日本全体で約1,100万人の労働力が不足すると予測されている。近い未来である2030年には、約341万人不足すると見込まれており、東京都以外の全都道府県で労働供給が不足する見通しだ。

 人手不足の問題は、現在進行系で取り組まなければならない重要な課題である。この課題解決はかなり困難な状況ではあるが、明るいニュースがないわけではない。8日、パーソルキャリア(転職サービスdodaを運営)が運営するプロフェッショナル人材支援サービス「HiPro(ハイプロ)」は調査結果を発表した。実施された「地方でのはたらき方に関する実態調査」は、一都三県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)在住の経営者・役員含む会社員929名を対象にしている。

 この調査によれば、地方副業に「興味がある」と回答した会社員は、全体の約60%だった。さらに、「興味がある」と回答したうちの約70%が「月額10万円未満」の副業収入を期待している。地方副業に「興味がある」人が約60%を占める一方で、「地方転職」に興味がある人は全体の約40%だった。「地方副業」と「地方転職」への興味には約20%の差があり、地方副業の方がハードルが低いと考える人が多いことが調査結果から分かった。

■副業人材をどのように活用するかが課題

 地方転職よりも地方副業の方に興味を持つ人が多いのには、首都圏と地方の労働市場や環境の違いが大きく影響しているだろう。しばしば人口の東京一極集中が問題なるが、若者にとっては、地方に残りたくても就職口がなければ実現させられないのである。そのため、仕事やチャンスの多い東京に若者が集まるのは必然的であり、日本の歪な人口構成の原因にもなってしまっている。

 2022年4月、株式会社週休3日は「若手人材の採用」に関する実態調査を発表した。これによれば、調査対象となった地方企業の採用担当者108名のうち、約85%が「若手人材の採用は難しいと感じている」と回答している。年齢を問わず地方企業は人材不足に悩まされているが、殊更に若手人材の確保は難しい問題だ。

 ここで、地方企業による副業人材の活用は有効な選択肢となるだろう。東京や都市圏で活躍する人材を副業で活用すれば、地方企業の人手不足も緩和できるはずである。近年では、地方企業と副業者を繋ぐマッチングサービスもあり、環境も整っているからだ。

 だが、地方企業による副業人材の活用がなかなか進まないのは、活用方法に問題があるのではないだろうか。地方副業の多くはリモートワークで行われるため、活用のノウハウがないと成果に結びつけるのは難しい。そのため前段階として、経営課題の明確化や、副業人材に委託した業務の進捗管理の徹底が必要になる。つまり、地方企業側の受け入れ態勢の整備が欠かせないのだ。

 こうした副業人材を受け入れるための環境整備は、地方企業が独自に行うのには限界がある。地方副業の推進のためには、活用ノウハウなど環境整備を支援する、さらなる取り組みが行政に求められるだろう。(記事:西島武・記事一覧を見る

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