ビッグモーター問題で、「損保ジャパン」はどんな役割を演じたのか? (上)

2023年7月29日 08:13

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 中古車販売大手のビッグモーター(東京都港区)は25日に開催した記者会見で、兼重宏行社長が26日付で辞任して後任に和泉伸二専務が就くことを発表した。修理の依頼を受けた車両に、修理部門の担当者等が受注した時より酷い損傷を与え、修理金額の嵩上げを図るというありえない事件は、取り敢えずカリスマと持て囃された男の退場に至った。

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 嵩上げした修理費用の保険請求に関して「上司の指示で自動車を過剰に修理し、費用を保険会社に請求している」という内部告発があったのは21年秋頃だから、現在まで2年近い月日が経過した。

 損保会社にとって看過できない告発を受けて、ビッグモーターとの取引を有していた損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は、それぞれ修理費請求書類のサンプル調査を実施。全国33の整備工場のうち25の工場で、修理費用が異様に高額な事例が合計3桁近くに上ったことを確認した。

 その結果を受けて、3社がビックモーターに自主調査の開始を要請したところ、ビッグモーターは「工場と見積作成部門の間で連携の不足や作業員のミスがあった」という報告をまとめ、「意図的なものではない」と結論した。損保ジャパンはその報告をほとんど丸呑みのような形で受け止め、「組織的な関与はない」とした。

 東京海上と三井住友海上はその報告に納得せず追加調査を求めたが、多大な保険契約を生み出してくるビッグモーターに対して、迫力がなかったようだ。

 東京海上と三井住友海上の足元を見透かしたかのような事態は、この後発生した。損保ジャパンが早々とビッグモーターの報告を追認した7月以降、ビッグモーターの社内では「東京海上日動と三井住友海上の自賠責保険は扱わない」という通知が発せられ、その後自賠責保険の窓口は損保ジャパンに集約された。

 損害保険の運用を監視すべき損保会社間で代理店への対応が分かれ、代理店であるビッグモーターが、意に沿わない2社に対して露骨な報復を行ったということだ。

 ビッグモーターが追加の調査を行わないことに業を煮やした2社は、22年の夏以降独自の調査を開始して、「上司から修理費用の嵩上げを指示された」という証言を得た。さしものビッグモーターもこの証言を無視できず、第3者調査の実施を求め続けた2社に膝を屈した形になった。

 ビッグモーターは23年1月30日になって特別調査委員会の設置に同意し、青沼隆之弁護士を委員長とするチームの調査が6月20日まで続けられた。調査報告書の内容が明らかになったのは、1カ月近くも経過した7月18日だ。調査報告書がすんなり公表された訳でないことは、公表までに経過した日数が物語る。(下)に続く(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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