日本エム・ディ・エムは調整一巡、24年3月期増収増益。連続増配予想

2023年5月22日 14:08

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。23年3月期は獲得症例数増加などで2桁増収・2期連続過去最高売上高だったが、為替の円安影響や販管費の増加などで減益だった。24年3月期は日本および米国における症例数の増加、円安影響の一巡などで増収増益予想、そして連続増配予想としている。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。株価は決算発表を機に反発する場面があったが買いが続かず安値圏だ。ただし調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。

■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。

 23年3月期のセグメント別(調整前)業績は、日本国内の売上高が1.9%増の123億56百万円で営業利益が33.2%減の12億31百万円、米国の売上高が17.6%増の127億82百万円で営業利益が22.8%減の6億47百万円だった。地域別・品目別売上高(売上控除前)は、日本の人工関節が0.4%増の47億38百万円、骨接合材料が5.0%増の43億22百万円、脊椎固定器具が1.9%増の31億85百万円、その他(人工骨など)が20.9%減の3億54百万円、そして米国の人工関節が26.5%増の89億10百万円、脊椎固定器具が54.8%増の40百万円だった。自社製品比率は80.6%で1,4ポイント上昇した。

 収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。

 なお22年1月に筆頭株主が異動した。日本特殊陶業が保有する株式を三井化学に譲渡(手続として売り出しによる譲渡)し、三井化学が筆頭株主となった。日本特殊陶業との資本業務提携を解消し、新たに三井化学と資本業務提携した。

■中期経営計画「MODE2023」

 中期経営計画MODE2023では、目標値に24年3月期売上高220億円(日本90億円、米国・オーストラリア132億円)、営業利益35億円、経常利益34億円、親会社株主帰属当期純利益23億円、ROE(自己資本利益率)10.0%、ROIC(投下資本利益率)9.0%を掲げている。想定為替レートは1ドル=108円である。また10年後の目指す姿として、日本内資企業で売上高首位、世界整形外科市場で15位以内を目指すとしている。

 中期重点施策として海外ビジネスの拡大、開発・調達力の強化、人材・組織の専門性強化、デジタル化を推進する。そして利益の伴った持続的な成長を実現するとしている。

 海外ビジネスの拡大は、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指す。中国では合弁会社設立による米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指す。

 22年9月にはオーストラリアの子会社Ortho Developmentを清算(23年3月清算結了予定)すると発表した。海外ビジネス拡大に向けて米国ODEV社の子会社として19年4月に設立したが、コロナ禍も影響してオーストラリアにおける米国ODEV社製品の薬事承認取得に想定以上の時間を要し、設立時の事業見通しから大きな乖離が発生しているため22年3月に事業活動を休止した。そして同市場への再参入時期を合理的に見通せない状況と判明したため清算を決議した。

 開発・調達力の強化は、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発、および新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を目指す。

 21年3月には米国ODEV社が中国WASTONと、中国現地生産品の製造・販売を目的とした合弁会社を設立した。21年5月には米国ODEV社が米国THINK社と共同で、米国ODEV社の人工関節製品を用いた人工関節全置換手術を、THINK社の手術支援ロボットシステムを用いて行うことができるようにした。

 22年7月には、米国ODEV社製造の人工股関節新製品「Promontoryヒップシステム」の日本における薬事承認を取得、米国ODEV社製造の脊椎ケージ「Vusion Ti3D ARCケージ」の日本における薬事承認を取得した。

 22年12月には米国ODEV社が、Materialise社(ベルギー)製の患者適合型人口膝関節手術用器械BKS Total PSIを共同開発し、米国医療施設向けに供給開始すると発表した。

 23年3月には米国ODEV社が、人工関節置換手術に使用するNaviswiss社製の人工股関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Hip および人口膝関節置換手術用ナビゲーションシステムNaviswiss Kneeを米国医療施設向けに導入すると発表した。Naviswiss Hipは24年3月期第1四半期に導入予定、Naviswiss Kneeは24年3月期後半に導入予定である。

■サステナビリティの取り組み強化

 さらにサステナビリティの取り組みを強化している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。

 22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。

 22年12月には、国際的な環境評価の情報開示システムを運用するCDPから、環境問題によるリスクや影響を管理している企業として、スコアレベル「B-」評価として認定されたと発表している。

■24年3月期増収増益・連続増配予想で収益改善基調

 23年3月期の連結業績は売上高が22年3月期比11.0%増の213億07百万円、営業利益が23.9%減の20億24百万円、経常利益が21.1%減の20億43百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が33.3%減の14億23百万円だった。配当は22年3月期比1円増配の13円(期末一括)とした。

 売上面はコロナ禍の影響が和らぎ、獲得症例数増加などで2桁増収・2期連続過去最高売上高だったが、利益面は、為替の円安影響による仕入コスト増加、国内における償還価格引き下げの影響、国内体制強化に伴う人件費の増加、米国売上増加に伴う支払手数料(コミッション・ロイヤリティ)の増加、円安に伴う米国での費用(円換算後)の増加などで減益だった。売上原価率は34.3%で2.0ポイント上昇、販管費比率は56.2%で2.4ポイント上昇した。特別利益では22年3月期計上の債務免除益3億10百万円が剥落し、特別損失では訴訟和解引当金繰入額1億円、開発検証期間中製品の販売中止による損失1億42百万円を計上した。

 セグメント別(調整前)に見ると、日本国内は売上高が1.9%増の123億56百万円で営業利益が33.2%減の12億31百万円だった。売上面では22年4月の償還価格引き下げの影響に加えて、第3四半期の一部病院施設における医療従事者不足の影響で獲得症例数が減少したため、小幅増収にとどまった。利益面は体制強化に伴う人件費増加や営業活動回復に伴う広告宣伝費の増加などで減益だった。

 米国は売上高が17.6%増の127億82百万円で営業利益が22.8%減の6億47百万円だった。売上面は、既存顧客向け販売促進策の効果で獲得症例数が増加したことに加えて、上期に発生したサプライチェーン問題が下期に改善し、延期していた新規顧客との販売契約を下期より順次契約した。米国の外部顧客向け売上高は米ドルベースで5.9%増の66百万USドル、円換算後で26.6%増の89億51百万円だった。このうち第4四半期は米ドルベースで10.6%増と伸長した。利益面は支払手数料(主にコミッション)や人件費の増加で減益だった。

 医療機器類の地域別・品目別売上高は、日本の人工関節が0.4%増の47億38百万円、骨接合材料が5.0%増の43億22百万円、脊椎固定器具が1.9%増の31億85百万円、その他(人工骨など)が20.9%減の3億54百万円、米国の人工関節が26.5%増の89億10百万円、脊椎固定器具が54.8%増の40百万円だった。自社製品比率は80.6%で1,4ポイント上昇した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が50億27百万円で営業利益が4億98百万円、第2四半期は売上高が49億62百万円で営業利益が4億29百万円、第3四半期は売上高が56億35百万円で営業利益が5億83百万円、第4四半期は売上高が56億83百万円で営業利益が5億14百万円だった。

 24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比9.3%増の233億円、営業利益が23.5%増の25億円、経常利益が17.4%増の24億円、親会社株主帰属当期純利益が5.4%増の15億円としている。想定為替レートは1USドル=135円(23年3月期実績は1USドル=134.95円)としている。配当予想は23年3月期比1円増配の14円(期末一括)としている。連続増配予想で予想配当性向は24.5%となる。

 重点施策として、日本市場では人工関節・脊椎固定器具分野の新製品の全国展開、大腿骨頚部転子部骨折治療分野の症例獲得、営業体制強化による顧客基盤の強化、人工股関節販売強化・手術支援システム継続運用、三井化学との共同開発、米国市場ではUHKAS(ODEV社主催)による顧客基盤の強化、West地区の営業体制強化、新製品の全国展開による販売強化、手術支援システム運用による人工関節販売強化、製造原価低減などを推進する。

 地域別・品目別売上高(売上控除前)の計画は、日本国内が7.8%増の135億80百万円(人工関節が11.0%増の52億60百万円、骨接合材料が4.1%増の45億円、脊椎固定器具が8.6%増の34億60百万円、その他(人工骨など)が1.5%増の3億60百万円、そして米国が11.7%増の100億円(人工関節が12.2%増の100億円)としている。自社製品比率は81.8%で1.2ポイント上昇の見込みとしている。

 24年3月期は日本および米国における症例数の増加、円安影響の一巡などで増収増益予想としている。売上原価率は33.5%で0.8ポイント低下、販管費比率は55.8%で0.4ポイント低下の計画としている。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。

■株価は調整一巡

 株価は決算発表を機に反発する場面があったが買いが続かず安値圏だ。ただし調整一巡感を強めている。出直りを期待したい。5月19日の終値は912円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS57円03銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円で算出)は約1.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS880円64銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約241億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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