【映画で学ぶ英語】『オズの魔法使』の映画史に残る名言

2022年11月28日 07:59

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 第2次世界大戦勃発直前の1939年に公開されたミュージカル・ファンタジー映画『オズの魔法使』。鮮やかなテクニカラーや劇中歌「虹の彼方に」をはじめとする音楽が幻想的な物語の演出を引き立て、映画史に残る傑作となった。

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 今回はこの映画から、その後アメリカで一般的な表現として普及した名セリフと、それに関連する表現を学習しよう。

■映画『オズの魔法使』のあらすじ

 主人公のドロシー・ゲイル(ジュディ・ガーランド)は、おじ・おば夫婦や3人の下働きとともに、カンザスの農場で暮らす10代の少女。

 ある日、ドロシーの愛犬トトが近所の女性をかんでしまい、殺処分されることになった。ドロシーはトトを連れて家を飛び出すが、占い師マーヴェルに「おばさんがとても心配している」と言われて家に帰ることにする。

 しかし、家に帰ったドロシーを竜巻が襲った。なんとかファームハウスに逃げ込んだドロシーだが、頭を打って気を失い、建物ごと見知らぬ国へ運ばれてしまい……。

■映画『オズの魔法使』の名言

 目を覚ましたドロシーが窓の外を見ると、そこは今までとは違う色鮮やかな魔法の世界。不思議な気持ちのドロシーは、トトに次のように言う。

 「Toto, I’ve (got) a feeling we’re not in Kansas anymore.」(トト、ここはカンザスじゃないみたい)

■表現解説

 このセリフで使われた「not in Kansas anymore」という言葉は、その後アメリカで一般的な表現として広まった。「自分が理解できる、馴染みがある環境ではもはやない」というイディオムとして定着している。

 地名にはカンザスを使うのが標準ではあるが、文脈によっては他の地名をあてはめることもある。カンザス以外の地名を使う場合には、映画のセリフの流用であることを明確にするため、「We’re not in ~ anymore, Toto」となる。

 たとえば、米ペンシルベニア州アレンタウンのThe Morning Call紙が、同州で長い歴史を誇るホテル・ハーシーを紹介した記事。凝った装飾に目を見張る噴水ロビーについて、次のように書いている。

 Anyone stepping inside is likely to murmur: “We’re not in Pennsylvania anymore, Toto.”

 ロビーに入ると、誰もが「トト、ここはペンシルベニアじゃないみたい」とつぶやくだろう、ということだ。

 「Not in Kansas anymore」に似たイディオムとしては、「out of one’s depth」という表現があげられる。文字通りには「足が届かない深さ」だが、慣用句として「対処する能力がない、準備ができていない状況に置かれている」という意味になる。

 たとえば、「The team soon realized they were out of their depth on the first day of the tournament」(トーナメント初日から勝ち目がないことをチームは悟った)のように使われる。(記事:ベルリン・リポート・記事一覧を見る

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