ミロク情報サービスは売られ過ぎ感、23年3月期営業・経常利益横ばい予想だが保守的

2022年5月30日 12:36

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 ミロク情報サービス<9928>(東証プライム)は財務・会計ソフトを主力として、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した統合型DXプラットフォームの構築を目指し、クラウドサービス・サブスクモデルへの変革も推進している。22年3月期はソフトウェア売上やストック型のソフト使用料などが伸長し、先行投資を吸収して増収増益だった。23年3月期はソフトウェアの提供形態を売り切り型からサブスクリプション型へ移行することや先行投資などを考慮して営業・経常利益は横ばい予想としている。ただし保守的だろう。会社予想は上振れの可能性が高く、クラウドサービスの伸長や積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は1月の年初来安値に接近して軟調だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。

 22年3月期売上高構成比は、フロー型のシステム導入契約売上高が55%(システム導入契約時のハードウェアが9%、ソフトウェアが34%、システム導入支援サービスなどのユースウェアが13%)、ストック型のサービス収入が36%(会計事務所向け総合保守サービスTVSが7%、ソフト使用料が8%、企業向けソフトウェア運用支援サービスが15%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が4%、サプライ・オフィス用品が2%)、その他が9%だった。なお、システム導入契約売上高の販売先別売上高構成比は、企業向けが52%、会計事務所向けが30%、その他が18%だった。

 会計事務所が抱えている課題を解決することで、中堅・中小企業支援にも繋がるトータルソリューションを強みとしている。なお21年11月には、中堅・中小企業向けERP「MJSLINKシリーズ」が、矢野経済研究所「2021ERP市場の実態と展望」で09年から12年連続売上高シェアNo.1、およびデロイト トーマツ ミック経済研究所「基幹業務パッケージソフトの市場展望2021年度版」の中規模企業向けERPシステム部門で売上高シェアNo.1となり、ダブルでNo.1を獲得したと発表している。

 収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有し、ストック型収益が伸長して収益力が向上している。新規顧客開拓にも注力し、21年3月期の新規企業向け売上高比率は5.2ポイント上昇して34.0%となった。

 またAPI契約またはスクレイピング契約により、同社の製品・サービスから連携可能な金融機関は、21年2月時点で国内金融機関1270のうち1118(カバー率88.0%)に達している。

■M&A・アライアンスも積極活用

 20年4月に組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化、20年5月にフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTがセントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化、20年11月にリーガルテック企業であるリセと資本業務提携、20年12月にデジタルマーケティング支援のトライベックを子会社化、21年1月に信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画、ゼロ知識証明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。

 21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合して、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。21年6月には、税務・会計を中心としたコンテンツ提供や士業事務所の経営支援サービスを提供するKACHIEL(カチエル)と資本業務提携した。21年9月にはアナリティクス・コンサルティングサービスやAI開発・運用を行うセカンドサイト社と資本業務提携した。AIを軸としたDX分野の新製品・サービスの開発を目指す。

 22年2月には子会社DX Tokyoを設立した。全国の中小企業を対象にIT専門家シェアリング/サブスク事業を展開する。

■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進

 中期経営計画Vision2025(21年度~25年度)では、経営目標値として26年3月期の売上高550億円、経常利益125億円、経常利益率22.7%、ROE20%超を掲げている。内訳は、単体ベース(ERP事業)が売上高360億円で経常利益75億円、グループ会社が売上高150億円で経常利益25億円、グループ新規事業(DX事業)が売上高50億円で経常利益25億円としている。

 基本戦略として会計事務所ネットワークno.1戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、統合型DXプラットフォーム戦略(新規事業領域)、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進する。

 単体ベース(ERP事業)では、クラウドサービスの拡充とサブスクリプション型収益モデルの比率を高めて、安定的な収益基盤の更なる強化を目指すとともに、価値創造を最大化する総合的なソリューションを展開する。    グループ会社では、コンサルティング&技術力の発揮と、グループ再編による生産性の向上を目指す。

 グループ新規事業(DX事業)では、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームを構築し、新たなコミュニケーション&クラウドサービスを展開する。

 21年3月には、中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステムの「MJSLINK DX」の販売を開始した。さらに21年9月には、クラウド型ワークフローサービスの「MJS DX Workflow」の提供を開始した。中堅企業向けERPシステム「Galileopt NX―Plus」とリアルタイムでデータ連携し、中堅企業の業務効率化を支援する。

 21年12月には、連結納税制度から移行されるグループ通算制度(令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用)に対応したシステムを、22年10月から提供開始すると発表している。グループ通算制度に対応した申告書の作成業務効率化を支援する。

 なお22年5月には、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けて、サステナビリティ基本方針の策定、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定、サステナビリティ委員会の設置を発表した。サステナビリティ基本方針は、DX推進による地球環境への貢献、会計事務所と中小企業の経営革新や成長・発展を支援、多様なプロフェッショナル人材が活躍する働きがいのある職場づくり、健全成長のためのガバナンスの強化としている。

■社会全体のDXを推進

 なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表した。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げた。

 20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。

■23年3月期営業・経常利益横ばい予想だが保守的

 22年3月期の連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微)は、売上高が21年3月期比7.4%増の365億97百万円、営業利益が5.8%増の47億89百万円、経常利益が5.8%増の47億71百万円、親会社株主帰属当期純利益が70.2%増の45億17百万円だった。なお特別利益に、pring社株式譲渡に伴う関係会社株式売却益20億87百万円を計上した。配当は21年3月期比7円増配の45円(期末一括=普通配当40円+特別配当5円)とした。

 ソフトウェア売上やストック型のソフト使用料などが伸長し、新製品リリースに伴う製品償却費の負担増や人件費の増加などの先行投資を吸収して増収増益だった。収益認識会計基準適用の影響額としては、従来方法に比べて売上高が3億82百万円減少、売上原価が3億68百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益がそれぞれ13百万円減少している。

 システム導入契約売上高は21年3月期比4.7%増の202億36百万円(ハードウェアが13.5%減の31億10百万円、ソフトウェアが9.3%増の124億16百万円、ユースウェアが7.8%増の47億09百万円)だった。

 サービス収入は21年3月期比6.8%増の130億04百万円(会計事務所向けTVSが1.7%増の25億17百万円、ソフト使用料が20.8%増の27億78百万円、企業向けソフトウェア運用サービスが6.2%増の55億96百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービスが2.6%増の15億05百万円、サプライ・オフィス用品が8.7%減の6億06百万円)だった。ストック型のソフト使用料がサブスクリプションモデル採用なども寄与して大幅伸長した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が87億47百万円で営業利益が9億39百万円、第2四半期は売上高が90億34百万円で営業利益が14億23百万円、第3四半期は売上高が94億86百万円で営業利益が14億33百万円、第4四半期は売上高が93億30百万円で営業利益が9億94百万円だった。

 23年3月期の連結業績予想は売上高が22年3月期比6.0%増の388億円、営業利益が0.2%増の48億円、経常利益が0.6%増の48億円、親会社株主帰属当期純利益が特別利益の剥落で35.8%減の29億円としている。配当予想は特別配当5円を落として22年3月期比5円減配の40円(期末一括)としている。

 ソフトウェアの提供形態を売り切り型からサブスクリプション型へ徐々に移行すること、さらに、ソフトウェア資産償却負担増や新卒新入社員積極採用などの先行投資も考慮して営業・経常利益は横ばい予想としている。ただし保守的だろう。会社予想は上振れの可能性が高く、クラウドサービスの伸長や積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は1月の年初来安値に接近して軟調だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。5月27日の終値は1183円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円13銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想40円で算出)は約3.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS743円26銭で算出)は約1.6倍、そして時価総額は約412億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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