換気がクラスター発生の原因にも 施設の構造次第で 電気通信大の研究

2022年2月18日 15:40

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コンピュータによる熱流体シミュレーションの結果(画像: 電気通信大学の発表資料より)

コンピュータによる熱流体シミュレーションの結果(画像: 電気通信大学の発表資料より)[写真拡大]

 新型コロナウイルス感染症の感染予防における重要なアプローチの1つとして、室内の換気が推奨されている。換気をすることによって、エアロゾル経由での新型コロナウイルスを防ぐことができる。

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 だが電気通信大学の研究グループは、施設の構造次第ではむしろ換気が集団感染を引き起こすことになると警鐘を鳴らしている。研究グループは18日、実際にクラスターが発生した宮城県の高齢者施設における換気状況について、調査結果を発表した。

 研究グループは室内の換気状況を可視化するため、施設内の二酸化炭素濃度を計測して実証実験を行ってきた。その中で得られた知見をもとに、換気チェック方法などのノウハウを「換気対策ガイドブック」としてまとめ、自治体経由で無償配布もしている。これまでの実証実験で得られた知見として、アクリルパネルなどの飛沫対策グッズが換気を阻害することなどが挙げられる。

 そのような実証実験を進める中で、宮城県の高齢者施設でクラスターが発生したとの連絡を受けた研究グループは、現地調査を実施。対象の高齢者施設では、デイルームで最初のクラスターが発生し、総感染者数は約60人にのぼっていた。

 施設の換気量はビル管理法の基準を満たしており、米国疾病予防管理センターの定める換気回数の基準にも適合しているなど、良好な換気状態であったという。

 だがデイルームに隣接する個室からデイルームへ気流が発生していたことが、今回の現地調査で明らかとなった。現地調査では、二酸化炭素トレーサガス法によって気流の可視化を実施。個室には初期感染者が1人入居していたため、そこからエアロゾル経由で感染が拡大したと考えられる。

 今回のケースのように、共用エリアと私的なエリアとが空間で繋がっている施設においては、気流も考慮した感染症対策が必要との知見が得られた。そのため研究グループは、ガイドラインの見直しや既存の施設における気流改善の必要性を提言していくとしている。

 今回の研究成果は、医学分野のプレプリントサービスである「medRxiv」に1月30日付で掲載されている。

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