ファーストコーポレーションは調整一巡、22年5月期は上振れの可能性

2021年12月30日 08:42

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 ファーストコーポレーション<1430>(東1)は造注方式を特徴として、分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。成長戦略として再開発事業にも注力している。22年5月期は不動産売上も寄与して増収増益予想としている。さらに上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。新市場区分への移行に関しては、12月21日にプライム市場選択申請を決議するとともに、上場維持基準の適合に向けた計画書およびコーポレートガバナンス・コードに対する取組を開示した。株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げたが、調整一巡して切り返しの動きを強めている。出直りを期待したい。なお1月7日に22年5月期第2四半期決算発表を予定している。

■造注方式が特徴のゼネコン

 東京圏(1都3県)中心に分譲マンション建設などを展開するゼネコンである。造注方式による大手マンション・デベロッパーからの特命受注と高利益率、品質へのこだわりによる安心・安全なマンション供給を特徴としている。

 造注方式というのは、当社がマンション用地を開発し、マンション・デベロッパーに対して土地・建物を一体とする事業プランを提案し、マンション・デベロッパーから特命で建築を請け負うという受注方式である。入札方式に比べて好条件での請負が可能となる。大手を中心とする優良なマンション・デベロッパーである。

 品質に関しては「安全と品質の最優先」を掲げて、施工品質管理標準・マニュアル類の整備、階層別研修会の実施、施工検討会による安全で堅実な施工計画の策定、巡回検査による正確性の担保など、良質で均一な品質を維持するための取り組みを推進している。また第三者機関による検査導入については、施主が第三者機関による検査を実施しない場合でも、建造物の安全性を確保するために重要な杭工事、配筋工事、レディーミクストコンクリートを対象として、当社が自前で第三者機関による検査を導入するなど、安心・安全なマンション供給に向けた体制を整備している。

 20年10月には、東京理科大学の認定ベンチャーであるサイエンス構造と、新たな免震集合住宅の工法として「ジーナス(ZENAS)工法」を開発し、建築構造物の「新構造システム」に関する特許および実用新案を共同出願した。

 完成工事高の収益認識は工事進行基準だが、不動産売上(マンション用地販売)によって四半期業績が変動する可能性がある。利益還元方針は、配当性向30%以上で経営成績や内部留保確保等を勘案して決定するとしている。

 なお21年6月23日に創立10周年を迎えた。また21年10月には、群馬県前橋市の企業版ふるさと納税として「バス路線維持事業、中心市街地再生事業、通学路安全対策事業」へ30百万円の寄付を行い、前橋市長から感謝状を受領した。

■年商500億円企業目指す

 中期経営計画「Innovation2021」では目標数値に、24年5月期売上高300億円(完成工事高184億円、不動産売上100億円、共同事業収入10億円、その他売上6億円)、営業利益24億円、経常利益23億50百万円、当期純利益15億95百万円、受注高210億円を掲げている。またROE(自己資本純利益率)20%以上、自己資本比率50%以上を目指す。

 将来像である年商500億円企業の実現に向けて業容の拡大と利益水準の向上に継続的に取り組むとともに、重点施策として中核事業(造注方式、建築事業)の強化、再開発事業への注力、事業領域拡大(大規模修繕、収益不動産など)による新たな価値創出、人材の確保・育成および働き方改革の推進に取り組む。

 再開発事業への注力では、JR前橋駅北口地区第一種市街地再開発事業に共同施工者として参画し、20年11月に施設建築物新築工事を着工(JV受注、24年完成予定)している。前橋市内初の超高層免震タワーマンションとなる。21年4月には名称を「Brillia Tower」に決定し、販売活動を開始した。さらに他の再開発案件にも積極的に参画していく方針だ。

 21年9月には新ジャンルの分譲マンション「CANVAS」ブランドを立ち上げると発表した。暮らす方々の身体的・精神的・社会的な健康状態がバランス良く調和の取れた状態であることを意味する概念「ウェルビーイング」をブランドコンセプトとして、ファーストエボリューション(20年11月設立)が新ブランドコンセプトを実現すべく竣工後の管理・販売代理・入居者サービス提供を行う。第一弾として中央住宅および中央日本土地建物との共同事業による「ウェルビーイングシティ構想」を始動し、分譲マンション「CANVAS南大沢」(東京都八王子市、22年11月竣工予定)を建設する。

 中期的な定量目標としては完成工事総利益率13%以上、売上高営業利益率8%以上、自己資本純利益率(ROE)20%以上、自己資本比率50%以上を目指すとしている。造注比率向上と生産性向上による利益率の底上げ、内部留保の蓄積による自己資本の充実、手持不動産の売却および有利子の圧縮による財務体質の向上を図る方針だ。

■22年5月期増収増益予想、さらに上振れの可能性

 22年5月期業績(非連結)予想は売上高が21年5月期比26.7%増の265億円で、営業利益が3.2%増の17億20百万円、経常利益が5.7%増の17億円、当期純利益が5.0%増の11億82百万円としている。配当予想は30円(期末一括)としている。前期比8円減配だが、普通配当ベースでは2円増配となる。

 第1四半期は、売上高が前年同期比2.7倍の100億68百万円で、営業利益が5.5倍の6億21百万円、経常利益が6.3倍の6億20百万円、四半期純利益が6.6倍の4億35百万円だった。

 不動産売上67億93百万円を計上(前年同期は3億10百万円)して大幅増収増益だった。完成工事高は30億82百万円で前年同期比4.8%減少したが、概ね順調な進捗だった。なお受注高は3件・51億70百万円で通期計画(7件・220億円)に対する進捗率は23.5%だった。

 通期の売上高の計画は、完成工事高が4.1%増の155億71百万円、不動産売上高が2.0倍の100億58百万円、共同事業収入が50.2%減の3億43百万円、その他が64.2%増の5億27百万円としている。完成工事高は前期の好調な受注を背景として堅調に推移する見込みだ。利益面では造注案件の増加で完成工事総利益率の上昇も見込んでいる。

 不動産売上については手持ち不動産売却で通期計画達成の見込みとしている。21年10月には販売用不動産の売却(分譲用マンションの共同事業に供する予定、引渡日21年12月22日予定)を発表した。

 第1四半期が順調であり、通期も増収増益予想としている。さらに上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年11月末の株主対象

 株主優待制度は毎年11月末現在の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じてクオカードを贈呈(20年11月末適用から変更、詳細は会社HP参照)する。

■株価は調整一巡

 22年4月4日移行予定の新市場区分については、上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果で流通株式時価総額がプライム市場の上場維持基準を充たしていなかったため、21年12月21日開催の取締役会においてプライム市場選択申請を決議するとともに、上場維持基準の適合に向けた計画書およびコーポレートガバナンス・コードに対する取組を開示した。中期経営計画で掲げた各種取組を推進し、業績目標達成、株主還元拡充、コーポレートガバナンス充実などによって継続的に企業価値の向上を図り、25年5月期末までにプライム市場上場維持基準への適合を目指すとしている。

 株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げたが、調整一巡して切り返しの動きを強めている。出直りを期待したい。12月29日の終値は727円、今期予想PER(会社予想のEPS98円01銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の30円で算出)は約4.1%、前期実績PBR(前期実績のBPS520円77銭で算出)は約1.4倍、時価総額は約97億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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