温泉入浴でカピバラもお肌すべすべに 温泉の効果を科学的に検証 山口大

2021年12月20日 11:20

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  • 温泉入浴前後のカピバラの表情・行動の比較
 A. カピバラの寛ぎ状態(リラクゼーション効果)のスコア化。眼と耳の状態で評価。
 B. 目の評価。温泉入浴後にリラクゼーション効果が増している。
 C. 耳の評価。温泉入浴後にリラクゼーション効果が増す傾向にある。

 人類は古くから温泉に親しんできた。温泉で治療をする「湯治」ができる温泉は、今も残っている。病気の治療でなくとも、温泉で肌がきれいになったという経験をしたことがある人は多いだろう。だがこれまで、温泉療法に関する科学的な裏付けは少なく、動物実験による実証データはなかった。今回山口大学の研究グループは、カピバラの肌荒れに温泉が効果を示したことを明らかにした。

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 この研究は、山口大学大学井中賢吾大学院生、木村透教授らにより行われ、9日のNature Scientifc Reports誌の電子版に掲載された。

 今回実験を行ったのは、山口県の美肌の湯として1200年の歴史を持つ湯田温泉である。温泉には、火山のマグマの熱で温められた火山性温泉や、地下100mごとに3度上昇することにより深層地下水の温度が上昇してできる非火山性温泉など、いくつかの種類がある。湯田温泉は72度~76度で湧き出している非火山性温泉だ。その水質はpH9.3のアルカリ性で、ナトリウムイオンと塩素イオンを多く含む塩化物泉だ。

 実験動物として用いたのは、動物園動物のカピバラだ。カピバラはマウスやラットと同じ齧歯類としては世界最大である。もともとは南米のアマゾン川流域の高温多湿な環境で暮らしている動物だ。そのため気温と湿度が下がる日本の冬には、皮膚が乾燥し肌が荒れてしまう。

 研究グループは、秋吉台自然動物公園生まれの9頭のカピバラに対して、温泉の効果を調べた。健康な皮膚の状態として夏場の皮膚の状態を測定し、冬の皮膚と比較。夏の皮膚の水分含量は30%程度だが、冬場は8%程度と約4分の1まで下がっていた。皮膚のpHは夏は8.26と弱アルカリ性だが、冬場は7.25と低下。皮膚の表面を観察したところ、冬の皮膚は乾燥し表面が荒れており、一方夏の皮膚は赤黒く艶がある状態だったという。

 この冬場のカピバラたちに対して、35度の温泉に30分以上の湯浴を21日間継続して行った。そして湯浴を始めた日、7日目、21日目に皮膚の状態を測定。すると、皮膚の水分含量は約8%から約28%へと大きく上昇。皮膚のpHの状態は、今回の実験期間中は中性のままで変化がなかったという。またメラニン色素の量が減ったことより、美白の作用がある可能性も示唆された。皮膚の見た目も大きく改善し、なめらかな肌に戻っていた。

 さらに研究グループは、温泉入浴によるリラクゼーション効果について、カピバラの目の形と耳の位置で快適度をスコア化して測定。すると入浴中にカピバラの快適度が上がっていることがわかった。また温泉入浴前後での温度を頭、体幹、四肢末端で測定したところ、冷えていた四肢の温度は温泉入浴により上昇。その後30分は湯冷めしていなかったという。

 今回の研究により、21日間の湯田温泉への入浴で、カピバラの肌荒れが大きく改善することがわかった。この皮膚の状態の改善には、温泉の泉質だけでなく、入浴によるリラクゼーション効果や、保温効果も関与している可能性が考えられた。このように動物による検証で、温泉の効果を科学的に評価していけるようにすることが、今後温泉を人間の健康維持に役立てていくためにも重要なことだ。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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