日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(1)

2021年12月3日 16:27

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記事提供元:フィスコ


*16:27JST 日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(1)
【ゲスト】
喜田一成
株式会社スケブ 代表取締役社長
外神田商事株式会社 代表取締役
株式会社シーズメン CMO(Chief Metaverse Officer)

【聞き手】
白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)

●Meta(旧Facebook)がメタバースに「年1兆円の投資」

白井 2021年10月に、Facebookがメタバースへの事業シフトとともに、「メタ・プラットフォームズ」への社名変更と年間1兆円の投資を表明し、世間の耳目を集めました。

デジタル空間において、いま足元で何が起こっているのか、それは今後の未来を示唆しているのか。また、経済のあり方や労働、ひいては国益にどのような影響があるのか。これらをしっかりと検証する必要があると考えています。

メタバースとは、メタ(超)とユニバース(宇宙)をかけ合わせた造語であり、3Dの仮想空間です。

さまざまな解釈が存在しますが、私が理解しているメタバースの定義とは、
1.現実世界と仮想空間をリアルタイムにつなげるライブ性があり、
2.無制限の参加者を受け入れ、
3.異なるプラットフォームやワールド(空間)でデータやアイテムを連携(相互運用性)させることができ、
4.プラットフォーム内や周辺サービスでデジタルアイテムの買い物をすることが可能であり、
5.個人や企業に多様な体験を提供している、
となります。

現在、メタバースと呼べるもので最大のものは、VRChatという3D上のSNSであり、アバターに扮して、さまざまなワールド(空間)を体験し、他の参加者と会話することができます。

VR(Virtual Reality)は、日本語では仮想現実と訳され、コンピューターで作り出された環境を、あたかも現実であるかのように知覚させる技術です。ヘッドマウントディスプレーを被ることで、高い没入感を得ることができ、SNSやゲームだけでなく、作業現場や教育など色々な分野に使われています。

2021年11月のモルガン・スタンレーのレポートによると、時期の言及はないですが、メタバースの獲得可能な市場規模は8兆ドル(910兆円)と想定しており、また、アメリカの市場調査会社であるEmergen Researchによると、メタバースの市場規模は2028年には8,989.5億ドルに達し、それまでの年平均成長率は43.3%と予想しています。

今回は、クリエイターエコノミーやメタバース空間での第一人者であるSkeb(以下、スケブ)の社長「なるがみ」(インターネット上のハンドルネーム)さんこと、喜田一成さんをお招きしております。

実は、間もなく創業125年を迎える老舗出版社の実業之日本社が、2021年2月、スケブのすべての発行済株式を、スケブの経営者兼オーナーであった喜田さんから取得し、連結子会社化いたしましたが、喜田さんにはスケブの社長を引き続きお願いしております。

●世界で人気が加速「VRChat」とは

喜田 実業之日本社が、スケブのクリエイターエコノミーへの支援に対して強く共感してくださったことから、スケブの株式取得に踏み切っていただいたと理解しています。

私のスケブの売却理由としては、従業員の雇用や、スケブの経済圏で生活されている方への責任を果たすためには、大きな企業の傘下に入ったほうが良いと判断したからです。また、メタバース領域への投資資金確保という側面もあります。私は2年で4,500時間以上VRChatに滞在しており、さまざまな問題や可能性を理解することができました。

VRChatとは、バーチャル空間上でほかのプレイヤーとコミュニケーションを楽しめるサービスで、2021年現在、世界で最も接続者の多いVR仮想空間として人気を集めています。運営しているのはアメリカ企業のVRChat社です。

白井 私の場合は、スケブ株式取得を機に喜田さんとお会いする機会が多くなり、VRの可能性をお聞きしたり、喜田さんの自宅でVRChatをプレイさせていただいたりして、最近メタバースへの興味が湧いてきいたというのが実情です。そこにFacebookのニュースが飛び込んできたわけですが、私としては、インターネットのような巨大な地殻変動であり、未来を全く変えてしまうモノであると感じています。

このような大きな流れのなかで、労働に対する変化も感じることができます。一つは、井上智洋先生との対談でも話題に上ったテクノロジーの進化による失業(技術的失業)であり、もう一つがクリエイターエコノミーです。

インターネットが登場するまでは、一定数出荷しないと多様なコストを吸収できないため、均一な製品を大量生産し、マス広告を投入して販売してきました。しかし、インターネットの登場で、情報の流通コストがほとんどゼロになりました。

商材がデジタルデータであれば、カスタマイズも容易です。また、中央集権型の1対nのコミュニケーションから、分散型のn対nというコミュニケーションの時代となったため、小さなコミュニティに対してでもビジネスが可能となったように思います。これは「ロングテールによる就業」とも言えるでしょう。スケブ事業もその好例だと思っています。

「日本のクリエイター業界で、高品質商品が「あまりにも安く」設定されてしまう本当の理由—根底にあるのは「自信のなさ」?(2)」に続く

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