ドローンを母船に無人潜水機で海中観測 実証実験に成功 東大

2021年10月21日 08:21

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海中音響機器をロープで接続した様子(左上a)。1点吊りでは水中装置の向きを維持できないため、4点吊りにより機器を捕捉している。装置を投入する深さを調整する目的で10m近い長さのロープを使用。海中音響機器(左上b)。UAVの飛行(右上c)。観測中のUAV(下 d)。

海中音響機器をロープで接続した様子(左上a)。1点吊りでは水中装置の向きを維持できないため、4点吊りにより機器を捕捉している。装置を投入する深さを調整する目的で10m近い長さのロープを使用。海中音響機器(左上b)。UAVの飛行(右上c)。観測中のUAV(下 d)。[写真拡大]

 海中や海底での調査では、自律型無人潜水機(AUV)が使われるようになり、精度や効率の高い観測が行えるようになった。だがそのAUVを投入・回収するためには、基地(母船)となる船舶が必要であり、時間やコストがかかることが問題とされてきた。東京大学は20日、ドローンを基地として用いた海底観測の実証実験により、200メートル程度の通信を実現したことを確認したと発表した。

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 今回の実証実験では、基地である1機のドローンと、AUVを模擬したもう1機のドローンとの位置決定精度を検証。2機のドローン間の距離を20メートルから200メートルまで徐々に離して、その距離を海中音響通信機器で測定した。実際の観測ではAUVとドローンとの間で音響通信による位置決定が行われるため、通信の精度が正確な観測に必要となる。

その結果、位置決定精度の誤差がほぼ3メートル以内に収まっていることが確認された。この誤差は、流れによる影響を受けやすい海面での環境を考慮すると高い水準である。また、ドローンの場合は船舶と異なり海中の音響ノイズを発生させない点でも優れていることが確認された。

一方で、長時間の観測行動を想定した場合に、新たな課題も示されている。現在のドローンは電池の持ち時間に限界があるため、1時間程度にわたる観測を安定して行うことは難しい。そのため、電池の改良などによる長時間観測に向けた研究開発が必要不可欠である。

 また、AUVは海中に沈めることを前提としているため重量が大きいが、それをドローンで運搬するためには重量が小さくなくてはならない。そのため、単に重量を大きくする以外の方法で海中・海底観測が可能な機器を開発することも必要となってくる。この問題を解決することで、AUVの海中への投入・回収まで含めた実証実験のフェーズに進めることが期待される。

 今回の研究成果は18日付の「Remote Sensing」誌オンライン版に掲載されている。

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