時間が短縮された? 新型コロナ感染症の検査、何が変わったのか

2021年9月13日 17:47

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 新型コロナウイルスの感染が広がり始めた頃は、PCR検査の結果が出るまで2、3日と言われていた記憶がある。ところが今は1時間足らずで結果が出たという話を聞くこともある。この1年少しの間に検査法の何が変わったのだろうか?また現在PCR以外の検査方法にはどんなものがあるのだろうか?

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 PCRとは、DNAやRNAを鋳型=原本として、そのコピーをどんどん増やして感度を上げていく方法だ。1983年にKary Mulis博士により考え出され、1993年にノーベル化学賞を受賞したPCRは、研究の分野ではメジャーな方法として利用されていた。

 だが感染症の診断としてはまだまだマイナーだ。感染症の診断で主流なのは、原因の菌を培養したり顕微鏡で見て特定する方法や、インフルエンザのように抗原検査を行う方法である。とはいえ、これまでも麻疹などの一部の病気ではPCRによる診断が行われていた。

 DNAやRNAは「塩基」という物質が鎖のように繋がってできている。PCRの材料は、鋳型になるDNA又はRNAに、コピー取り始めの印となるプライマー、鎖の材料になるためのバラバラの塩基、そして塩基を繋ぐための糊となる酵素だ。これらを一緒にして温度を下げた時にコピーを作り、温度を上げた時に鋳型とコピーが外れる。そして新しい鎖も鋳型としてコピーを作る。これを機械の中で2~3時間かけて繰り返して増やしていくのがPCRだ。

 PCRより短時間で結果が出るのが「核酸増幅法」と言われる方法だ。LAMP法、TRC法、NEAR法などがすでに新型コロナ感染症の診断法として利用されている。この方法の特徴は、工夫された特殊なプライマーを使うことで、常温のままでDNAが増幅できることだ。温度の上下にかかる時間も不要のため、短時間で大量のコピーを取り終わる。通常のRT-PCR法と比べると精度はやや落ちる。

 PCRとは全く異なる仕組みで感染を判定する方法として「抗原検査」がある。これは、ウイルスに結合する抗体を使い、ウイルスの有無を検出する方法だ。インフルエンザの検査で使われているものと同じ仕組みである。30分程度で結果ができることや、設備が必要でなく小さなクリニックでも使用できることなどが利点となる。一方PCRと比較すると精度は落ちてしまう。

 もうひとつ耳にすることがあるのは、「抗体検査」だろう。これは、新型コロナ感染症にかかった後に体の中にできている抗体を調べるものだ。つまり「かかったことがあるかどうか」を調べる方法であり、今かかっているかどうかはわからない。またワクチン接種でも抗体はできるため、この検査では陽性になる。

 それぞれの検査に長所、短所があるため、状況によって使い分けていくことが重要だ。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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