スマートウォッチの刺激によるストレス緩和、身体感覚が正確であるほど効果あり 慶應義塾大

2021年8月29日 08:26

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 人が感じるストレスは心臓の鼓動や発汗、瞳孔の大きさなど身体内部の状態が密接に関係していることが知られている。ストレスが身体の状態に影響を与えることもあれば、逆に身体内部状態がストレスの感じ方を変えることもある。慶應義塾大学の研究グループは27日、スマートウォッチで疑似心拍刺激を与えることによる効果に着目して研究を行った結果、個人の身体内部の感覚によって疑似心拍刺激の影響が大きく異なることが判明したと発表した。

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 これまでの研究においても、心拍を模した音など疑似心拍刺激によって人の感情が変化することは知られてきた。だがその変化の有無や程度については研究によって異なっており、一貫した結果が得られていなかった。そこで研究グループは、個人の持つ身体内部の感覚である「内受容感覚」が結果に大きな影響を与えている可能性に着目。

 今回の研究では、最初に38人の被験者に自身の心拍速度を測定させて、その正確性で内受容感覚を評価した。次に被験者はスピーチや暗算などのストレスがかかる課題を実施。そのときに、スマートウォッチで自身の心拍速度より2割遅い疑似心拍刺激を与えた場合と、そうでない場合とで心拍数の変化を測定した。

 その結果、内受容感覚が正確な人ほど、刺激を受けない場合は心拍数が高くなりやすくストレスを受けやすかった。逆にスマートウォッチからの刺激を受けた場合は、心拍が遅くなり、ストレスが緩和される傾向も見られた。このことから、内受容感覚が正確であるほど、疑似心拍刺激によって副交感神経が強まりやすいことが分かった。

 この研究結果は、個人の内受容感覚によって、ストレスの感じ方やそれに必要な対処の仕方が異なることが示唆する。ストレス制御をする上で、内受容感覚を考慮に入れて行う必要があると明らかになったのだ。また今回の研究をさらに進めていくことで、スマートデバイスによる効率的なストレス制御が実現することが期待される。

 今回の研究成果は17日付の「Biological Psychology」誌のオンライン版に掲載されている。

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