卸業者と飲食店をつなぐMマートが、コロナ禍でも奮闘しえた理由

2021年8月19日 16:22

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 私がMマートを知り興味を覚えたのは、東証M市場への上場(2018年2月)直後だった。興味を覚えた理由は2点。主業が業務用食材のインターネットマーケットプレイス、要は卸問屋と飲食店をつなぐ「BtoB」サイトの展開。勉強不足が故だったかも知れないが、私にとっては馴染みの薄い業者だった。

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 そしてそれ以上に関心を惹かれたのは、創業者社長の村橋純雄氏の存在。未だ直接、ご尊顔は拝していないがある週刊誌(書籍名は覚えていない)で「白い長髭」を生やした写真を拝見。長らく飲食店を営み「問屋と飲食店舗の物流の在り方に疑問を覚え」、64歳で創業したという。そして81歳で上場。失礼ながら、81歳というご高齢で上場を果たした「起業家」など全く見聞きしたことがなかった。

 上場当初こそ興味を持ったが、以降今日までMマートを調べようという機会はないまま数日前に至った。そうだ、どうなっているかな・・・と思いついたのは「コロナ禍」で難渋しているのではないかとフッと思い出したからである。

 まず前2021年1月期の収益実績を確認した。「13.6%の増収、21.1%の営業増益、21.2%の最終増益」。今1月期は「15.9%の増収(9億100万円)、4.9%の営業増益(1億8600万円)、3.4%の最終増益(1億2300万円)」計画。そして第1四半期は前年同期比「22.8%増収、120.3%営業増益、129.2%最終増益」で通過している。コロナ禍で飲食店は休業要請でピンチなはず。となれば卸業者も「在庫増」で厳しいはず。それが何故・・・。

 Mマートのビジネスモデルは卸業者(売り手)にはサイトの使用料・システム利用料を課金するが、飲食店(買い手)には課金は一切なし。

 Mマートの加盟店ではないが「仲間に入れてもらうことを真剣に検討している」という飲食店主から、「前期に打った施策が好循環を起こしている」と聞いた。どんな施策か、店主はこう指折り数えた。

★緊急流通促進フェア: 在庫に苦しむ卸業者に出品を促す。飲食店には卸業者ととことん遣り取りを重ねた「値引き価格」で好品質食材の購入を勧める。

★即金・販売市場の緊急開設: 卸業者に手元流動性を高める為に激安価格で、ただし最短での代金決済を前提に過剰在庫品を出品させる。

★非接触販売の為のテイクアウト・弁当食材・容器フェアの出品。在宅勤務対応に向け、卸問屋と個人・家庭をつなぐ「C-joyサイト」の開設。

 こうした施策の結果前期は買い手会員数が毎月1000~1400社増えた。

 改めて調べなおして、実はサイトが4つに増えていることを知った。「Mマート(業務用食材の卸サイト)」「Bnet(厨房機器・食器・備品・食材以外の商品を扱う卸サイト)」「卸・即売市場(食材のアウトレット市場)」「ソクハン(食材以外のアウトレット市場)」。

 要は、「窮」場を凌ぐ/好機に変える施策が功を奏したのである。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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