【どう見るこの相場】あれこれ迷わず株式統合ラッシュで勝ち組の低PER銘柄に第2ラウンドを期待

2021年7月12日 13:47

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

【日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部】

 上場会社にとって目下焦眉の証券イベントといえば、東証の市場区分の再編だろう。来2022年4月4日に現在の4市場が、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場に再編される。前週末9日に各上場会社に一次判定結果が通知され、一部上場会社2191社のうち30.3%の664社が移行基準に抵触すると明らかになっており、逸早くプライム市場への適合通知を受領したと公表した会社も出た。流通株式比率、流通株式の時価総額、厳しいコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の導入などの上場基準をクリアすることが基準となっているだけに、一刻も早く株主と喜びを共有したくなる上場会社の目気持ちもよく分かる。と同時にガバナンス問題を抱える東芝<6502>(東1)や三菱電機<6503>(東1など)が、プライム市場に上場できるかも気掛かりとはなる。

 上場会社、証券界こぞっての証券イベントは数多いが、このなかで記憶に強く残っているのが、全国証券取引所が、2018年10月1日を実施期限として推進した「売買単位集約行動計画」である。売買単位(単元株式数)を100株に統一し誤発注を防ぎ投資しやすい環境とすることを目的として2015年から呼び掛けられた。この行動計画のために2015年から2018年10月までにラッシュとなったのが株式統合である。その数は、3年間でザッと800社を超えた。

 売買単位を1000株からそのまま100株に引き下げれば、1売買単位の投資金額が、何千円、何百円と極小化してしまう低位株は数多かった。そこで株式統合比率を10株を1株、5株を1株、2株を1株などとして統合、理論的に統合比率の分だけ株価は上昇することになるわけで、一方、1株当たりの資産価値には変化はなく株価的には中立要因になるはずであった。ところが以来2年余、この統合比率通りに株価が上昇した銘柄、統合比率以上に株価が急騰した銘柄、統合比率を下回って株価が低迷した銘柄などの勝ち負けが歴然となった。

 負け組の典型は、今年7月26日に上場廃止予定の五洋インテックス<7519>(JQS・整理)である。株式分割の権利付き最終日の400円が、効力発生日に統合比率(10株を1株に統合)通りに4000円で寄り付き、その後実施した株式分割(1株を5株に分割)効果もあって6050円高値まで上昇したが、今年7月7日に上場来安値18円まで売られ、安値水準でマネーゲーム的な売買が続いているものの、株式分割を勘案しても株式統合の理論価格を大きく下回った。このほか債務超過で上場廃止となり太陽誘電<6976>(東1)に子会社化されてエルナー、オリックス<8591>(東1)に株式公開買い付けされて上場廃止となった大京、銀行業界の再編で経営統合された十八銀行、日清紡ホールディングス<3105>(東1)により株式交換で子会社化された日本無線などのケースもある。

 もちろん今週の当特集が取り上げているのは、統合比率勘案の理論価格を上回り足元の今年に入ってこれまで年初来高値を更新した勝ち組銘柄で、なかでもこの高値水準でもなお低PER・PBR水準にある銘柄に注目した。株式統合ラッシュとなった800社超のなかから、このスクリーニング条件をクリアした銘柄を手作業で集計したところ、一部漏れがあるかもしれないが60社を数えた。コード番号の末尾が「01」を構成するかつての主力銘柄「01銘柄」が底力を発揮したケースから、プライム市場への昇格予備軍人気で比較的値保ちのよい東証2部株、JQ銘柄なども含まれバラエティに富んでいる。

 週明けきょうの東京市場は、前週末9日の米国市場で3株価指数が揃って史上最高値を更新したことを受け、ギャップアップして始まり戻りを試す展開が有力である。問題は、買い一巡後にある。東京市場には、東京都に新型コロナウイルス感染症に対する第4回目の緊急事態宣言が発出され、記録的な大雨により全国各地に自然災害が続発し、さらにあと9日後に開会式が迫る東京オリンピックも、「安全安心」どころかまだ何が起こるか分からず問題含みであるなど国内独自のアゲインスト材料が控えて投資家心理に響くことも懸念される。また米国市場高に強く反応するのはグロース株かバリュー株かの選択も悩ましい。そのなかで、中長期スタンスで株式併合の勝ち組の低PER銘柄にアプローチ、上昇トレンドへ再発進の第2ラウンドを期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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