東大、世界最高水準の強靭性と即時回復性持つゲルを開発 人工靱帯などに期待

2021年6月6日 16:50

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 ハイドロゲルはその柔らかさと生体適合生徒から、人体に埋め込む生体材料として応用が期待されているが、機械強度が弱いという問題があった。近年では様々な高強度のゲルが開発されてきたが、繰り返しの負荷がかかると元に戻りにくい点は依然として課題であった。

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 東京大学の研究グループは4日、引っ張ることで頑丈になり繰り返しの負荷にも耐えられるゲル材料を開発したと発表。開発したゲル材料は、世界最高水準の強靭性と即時回復性を有するという。

 従来の高強度ゲルは、「犠牲結合」と呼ばれる壊れやすい結合を導入することで、機械強度を向上させていた。犠牲結合には共有結合や水素結合、イオン結合などを有する物質が使われている。だがその犠牲結合が1度壊れてしまうと、元には戻らなかったり、元に戻るのに時間がかかったりするという難点があった。そのため、人工靱帯や関節などの生体材料として用いるには、ハードルが高く実用化は難しかった。

 そこで今回の研究では、ゲル内部の高分子鎖が密集して、結晶化したときに硬くなる現象に着目。高分子鎖どうしを環状の分子でひものように結び付けることで、力がかかったときに高分子鎖の結晶化が発生する。するとその部分が硬くなり、ゲルの破断が起こらなくなるため機械強度が向上する。また、この結晶化は力を取り除くと消失して元の状態に戻るため、繰り返しの負荷にも対応可能である。

 このような高分子鎖の結晶化については、天然ゴムの強靭化機構として1925年に発見されたものである。今回の研究は、それが溶媒を大量に含むゲル材料でも同様に起こることを世界で初めて示したものであるとも言える。また研究グループは、今回開発したゲルのような環状分子を利用する以外にも、高分子鎖の結晶化を利用した効果は有効であると述べている。

 高分子鎖の結晶化を利用した強靭性と即時回復性を有するゲルは、人工靱帯や関節などへの応用が期待される。

 今回の研究成果は4日付の「Science」誌オンライン版に掲載されている。

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