5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (50)

2021年4月20日 07:22

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 今回は、新社会人に向けて書きます。3カ月ごとのリフレクションにご活用ください。

【前回は】5年先まで使える広告代理店的プレゼンテーション術 (49)

 さて、どのような仕事も、双方向のコミュニケーションを積み重ねて成立させていくものです。

 コミュニケーションとは、発信者が何かしらの「目的」を持った情報(提案)を、受信者に対し、納得度の高い最良の「手段」で伝え、モノ・コトの真意やベネフィットを認知・理解・同意してもらうことです。

 ビジネス的には、ただの「情報伝達」に留まりません。イシューを特定し、最終的に「正解」や「別解」を創出していくところまでをコミュニケーションと言います。

 なんか……理屈っぽくて、メンドくさい。

 ここまで読んで、そう思われた方は、ご自身のコミュニケーションが機能不全に陥っているかもしれません。一度、点検してみましょう。

 たとえば、プレゼンというコミュニケーションの場では、受信側のクライアントは発信側(提案者)の本心・真意を探りながらも、提案内容を速やかにインプットし、次のステップに進めさせるか否かを精査しています。プレゼンは、「情報の質」と「あなたの質」を見極める品評会なのです。

 企業間で行われるプレゼンにかぎらず、社内ミーティングや月報、同期との何気ない日常会話、好意を抱く相手へのメールやLINEなどのコミュニケーションも同様です。それらはすべて、相手に品定めされています。

■(52)コミュニケーションとは、相手をコントロールし、イシューの答えを導き出すこと

【発信者】情報や提案を認めさせたい ⇔【受信者】損得を明確に開示させたい

 上記のように、発信者も、受信者も、それぞれ目的があります。ゆえに、対話やテキストにかぎらず、あらゆるコミュニケーションには、「お互いに情報を通じて相手をコントロールする」意思が常に働いていることを忘れないでください。

 また、「コントロール」という言葉に対し、洗脳的で支配的なネガティブ・イメージや、マウントを取るような低級ポジショントークの意味性を感じとる方がいるかもしれませんが、ここでは、「相手を納得させてこちらが思うように動かすこと」であり、「イシューへの答えを導き出す際に自然にとる人間の機能」と捉えてください。

 企業社会で生きることは、メンドーなことだらけです。だからといって、相手をコントロールすることをあきらめ、対話やテキストを十分に咀嚼せずに、遭遇したキーワードやタイトルに脊髄反射的に反応したり、同調圧力に屈した早計な結論を出すことだけは、絶対にやめてほしい。「コントロール」は、メンドーな課題にこそ使うべき機能の1つなのです。

 そして、相手を動かすために吸収すべき「情報」がたとえ大量であっても、辛抱強く読み込み、リテラシーを高めたコミュニケーションを展開すること。誰よりも深く、しっかりと「課題を掘り下げる」のです。
 
 ただし、「掘り下げる」だけでは、前にも上にも進めません。正解・別解に向かって、「組み上げていく」ことが重要です(人生も同じ)。掘り下げて見つけた「何か」と「何か」を合成する。情報の素となる「何か」の質そのものが、あなたのコミュニケーション総体の質を決定づけます。この高次元な統合的コミュニケーションを常態化していけば、必ず答えは見つかります。

 最後に。目先のプレゼンや議論において、相手との勝敗に一喜一憂するのではなく、あなたのアイデアをサービスとして実現させること。より利便性の高い社会へと変革させること。そんな視座の高い目的を持ったコミュニケーションを心がけていただきたい。

著者プロフィール

小林 孝悦

小林 孝悦 コピーライター/クリエイティブディレクター

東京生まれ。東京コピーライターズクラブ会員。2017年、博報堂を退社し、(株)コピーのコバヤシを設立。東京コピーライターズクラブ新人賞、広告電通賞、日経広告賞、コードアワード、日本新聞協会賞、カンヌライオンズ、D&AD、ロンドン国際広告祭、New York Festivals、The One Show、アドフェストなど多数受賞。日本大学藝術学部映画学科卒業。好きな映画は、ガス・ヴァン・サント監督の「Elephant」。
http://www.copykoba.tokyo/

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