大同特殊鋼、社会を支える素材機能の強化で成長を目指す

2020年6月2日 13:43

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「中津川先進磁性材料開発センター」(画像: 大同特殊鋼の発表資料より)

「中津川先進磁性材料開発センター」(画像: 大同特殊鋼の発表資料より)[写真拡大]

 大同特殊鋼は5月26日、「中津川先進磁性材料開発センター」を開所したと発表した。同社は中期経営計画で、「構造材料から機能材料へ」ポートフォリオ改革を進めている。その一貫として磁石事業の成長に向けた取り組みを行うため、磁石の製造・販売を行う子会社「ダイドー電子」が立地する中津川地区に同センターを開所した。

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 産学連携拠点とするため、名古屋工業大学元学長の松井信之名誉教授を技術顧問に迎え、中部地区の自動車産業、ロボット産業などの発展に寄与することを目指していく。

 大同特殊鋼は1916年、「電力王」とも呼ばれた福沢桃介が、余剰電力を利用した電気炉製鋼の事業化を目指し、電気製鋼所を設立したことに始まる。1925年に日本初のマンガン製特殊軌条の製作に成功し、1938年に大同製鋼と改称した。1976年に日本特殊鋼、特殊製鋼と合併し、現社名の大同特殊鋼となった。

 2020年3月期の売上高は4,904億円。事業別の構成比は、自動車・産業機械向け部品用材料、建設・工具用材料などの特殊鋼鋼材事業が37.1%、ステンレス、高合金、磁性製品、チタン材料製品などの機能材料・磁性材料事業が34.1%。自動車・ベアリング向け部品、工作機械用部品などの自動車部品・産業機械部品事業が19.8%、各種機械設備の保守管理を行うエンジニアリング事業が5.4%、グループ会社製品の販売、不動産・保険販売、分析事業などを行う流通・サービス事業が3.6%を占める大同特殊鋼の動きを見ていこう。

■前期(2020年3月期)実績、今期見通しは非開示
 前期売上高は4,904億円(前年比9.7%減)、営業利益は前年よりも90億円減の248億円(同26.8%減)であった。

 営業利益減少の要因としては、産業機械向けステンレス鋼、合金鉄の販売減少、磁石製品が中国の自動車販売減により不振だった機能材料・磁性材料が71億円の減益。また、自動車販売の減少などにより自動車部品・産業機械部品が19億円、自動車関連、産業機械関連の受注減少により構造用鋼、工具鋼などの不振で特殊鋼鋼材が8億円の減益となった。

 一方、省エネ機能向上メンテナンス事業を強化したエンジニアリングが7億円、グループ経営強化のため大同磁石(広東)有限公司他22社を連結子会社にしたことにより、流通・サービスが1億円の増益であった。

 今期見通しは、新型コロナウイルス感染症による自動車需要、鋼材需要に対する影響を合理的に算定することが困難なため、現時点では未定とし、可能となった段階で速やかに開示するとしている。

■中期経営計画(2018年3月期~2021年3月期)による推進戦略
 機能性に優れた素材で社会の技術革新を支えることを目指して次の戦略を推進する。

●1.構造材料から機能材料へのポートフォリオ改革
 ・耐熱性、耐食性、高清浄度、磁気特性に優れた機能材料、磁性材料の生産能力増強、ソリューション機能強化。

●2.事業基盤の強化
 ・QCD(品質、コスト、納期対応力)競争力の強化。

 ・物流の整流化、人材育成の強化を推進。

 ・選択と集中による事業の再構築。

 創業以来、特殊鋼をベースにした高度な技術力で、自動車、航空機、船舶、IT機器などの産業を支えてきた大同特殊鋼。今後は機能性に優れた素材の強化で、成長に挑む姿に注目したい。(記事:市浩只義・記事一覧を見る

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