不正競争防止法違反で逮捕されたオートウェイ社長らが不起訴処分となった背景

2020年1月6日 19:49

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 2019年11月13日に、大手タイヤホイール販売店「オートウェイ」の社長ら3人が逮捕されたことは記憶に新しいだろう。しかし、その翌月12月3日に不起訴処分が決定されていた。不起訴処分となった理由は、今回の問題となったホイールを、意図的に販売していなかったことだという。

 2019年11月、タイヤホイールを販売するオートウェイの社長ら3人が、安全基準を満たしていると偽り、粗悪のホイールを販売していたとして不正競争防止法違反により逮捕され、オートウェイ利用者のみならず、クルマを利用する多くの人に激震が走ったのは記憶に新しいところだろう。

 この背景には、ホイールの強度試験条件に関する試験方法や表示方法についてオートウィ役員の認識不足により、オートウェイ社内にも明確なルールが存在しなかったことが原因となっていた。

 そもそも、ホイールの強度試験条件とは、クルマに装着しても安全であることを証明する試験である。国産ホイールを見ると、「JWL」のマークが刻印されており、一般の人にもこのマークがホイールの信頼性に関するマークであるとの認識が広がっている。

 まず、「JWL」の試験方法には「一般使用条件」と「限定使用条件」の2種類が存在する。「一般使用条件」は、ホイールに履くことが出来るタイヤの中で、最大負荷荷重に耐えられる試験に合格することが条件である。一方の「限定使用条件」とは、取り付けハブ、孔数、P.C.Dごとに、最も重い輪重を調査し、その輪重に対して設定される試験である。

 このように、「一般使用条件」と「限定使用条件」とでは、試験でホイールにかける負荷の算出計算が異なるため、同じ「JWL」マークでも基準が全く違う。そこで、一般使用条件のホイールには「JWL」マークのみがホイール上に表示されるが、「限定条件」のホイールは、「JWL」マークに加え車両を代表する記号の表示が必要となる。

 今回、オートウェイで問題となったホイール「RS-601」は、2010年からオートウェイにて販売がされており、当然「JWL」の刻印が打たれていた。しかし、問題なのはこのホイールが「限定使用条件」にもかかわらず、あたかも「一般使用条件」に合格したように追加表示がなかったことだ。

 そしてもう1つ、ホイールの試験には、「自動車用軽合金製ホイール試験協議会」という第三者の試験機関による検査を実施したことを証明する「VIA」がある。この「VIA」の検査を実施していないにもかかわらず、「VIA」の刻印が表示されていた。

 このように、2つのホイール強度に関する表示方法が適切でなかったことが、今回逮捕の原因となったわけだが、どちらにおいても意図的に行われていなかったため、不起訴となったわけである。

 しかし2019年12月23日、今度は「株式会社ネクスト」という「アップガレージ」から派生した、タイヤホイールなどの卸を行っている会社が販売している「ゼクト・ウルフ」というホイールにも、強度基準を満たしていないホイールが混入していたことが発覚した。

 いずれも商品回収と無償交換、そして返金にも応じる措置をとっている。しかし、消費者は表示してあることを信じるしかなく、表示方法に偽りがあっても知るすべがない。販売する側はしっかりと検査や調査を行い、ホイールを販売してほしいものである。(記事:小泉嘉史・記事一覧を見る

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