北大、加熱すると瞬時に約2000倍の硬さになる素材を開発

2019年11月22日 11:50

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温度上昇による高分子ゲルの相分離の模式図(画像: 北海道大学の発表資料より)

温度上昇による高分子ゲルの相分離の模式図(画像: 北海道大学の発表資料より)[写真拡大]

 一般的な高分子は低温で硬く、高温になるとゴムのように柔らかい性質を持つ。しかし、そんな一般常識とは正反対の高分子が作製できることが判明した。北海道大学は19日、加熱して高温になると瞬時に約2000倍もの硬さになる高分子ハイドロゲルの開発に成功したことを発表した。

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 温度によって特性が変わる高分子は「温度応答性高分子」と呼ばれ、様々な分野への応用に向けて基礎研究がされている。例えば温度応答性高分子で有名なものにPNIPAAmという高分子がある。PNIPAAmは温度が変わると水への溶解性が変化することで知られ、生体応用などに向けた研究が盛んである。

 今回作製された高分子ハイドロゲルは、「相分離」によって硬さが変化することが特徴である。相分離というのは、水と油のように2種類の物質が分かれていく現象のことを呼ぶ。

 2000倍の硬さ変化というのは、例えるならば食用ゼリーからプラスチックへと変わるくらいの変化である。しかも、この変化は何度も繰り返しで同じように起こすことが可能である。硬い状態になっても冷やすことで元の状態に戻ることが確認されている。

 さらに、今回開発された高分子ハイドロゲルは、原料に汎用性があり安価で無毒であるという特徴がある。さらに作製プロセスも簡単であるため、身近な用途への応用も期待される。

 応用例として、交通事故やスポーツのアクシデントの際に身体を保護するスマートプロテクターがあげられる。アクシデントの際に発生する大きな摩擦熱に応答することで瞬時に硬くなり、プロテクターとして機能することが期待される。実際、アスファルト表面で高速で引きずる実験でもほとんど壊れずに硬くなることが実証されている。

 また、今回の高分子ハイドロゲルは熱吸収性を有することから、酷暑対策の熱吸収材としても応用可能である。例えば窓ガラスなどにハイドロゲルを貼っておくことで、室内の温度上昇を抑制できることも確認されている。

 この研究成果は、18日付のAdvanced Materials誌のオンライン版に掲載されている。

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